サイエンス

2025.04.27 17:00

立ち入り禁止の毒へビ島、その主「黄金のマムシ」が近絶滅種になった理由

ゴールデン・ランスヘッド(Wirestock Creators / Shutterstock.com)

そのヘビは、ハララカ(Bothrops jararaca:別名アメリカハブ)という、本土のヘビだった。現在、ブラジルの毒ヘビによる咬傷の多くを占める、悪名高いヘビだ。クサリヘビ科のマムシ亜科、ヤジリハブ属に属する彼らは、大陸では齧歯類や爬虫類を捕食していたが、島が孤立したことで、その選択肢は次々と変わっていった。

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哺乳類がいなくなって追い詰められた彼らには、動きの速い鳥を捕まえる圧力が常にかかるようになり、ハララカの個体群は徐々に別のものになっていった。その子孫が、現在のゴールデン・ランスヘッドだ。ハララカよりも全長が長く、さらに強力な毒を持つ。

ゴールデン・ランスヘッドは、森林で覆われたこの島にしかいない。彼らが進化させた毒は非常に強力で、獲物は恐ろしいほど短時間で動けなくなる──毒牙がかすめただけでも、獲物を逃がさずに捕らえられるのだ。

島として孤立したことで、ゴールデン・ランスヘッドの生存のルールは一変した。島には大きな捕食者がおらず、毒は、生存競争で最大の強みになった。

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近絶滅種であるマムシ亜科のゴールデン・ランスヘッド(Shutterstock.com)
近絶滅種であるマムシ亜科のゴールデン・ランスヘッド(Shutterstock.com)

2種の鳥だけを捕食する謎

スネークアイランドには41種の鳥類が生息していると記録されているが、ゴールデン・ランスヘッドが食料にするのは、もっぱらElaenia chilensisというタイランチョウ科の鳥と、キアシクロウタドリ(Turdus flavipes)の2種のみだ。どちらも、決まった季節にやってくる移動性のスズメ目で、Elaenia chilensisは晩夏、キアシクロウタドリは冬に来島する。

おそらく重要なのは、この2種はどちらも、ゴールデン・ランスヘッドが獲物にするのにちょうどいいサイズとスピードだったことだ。

興味深いことに、研究によるとこの島で最も豊富な鳥であるミナミイエミソサザイ(Troglodytes musculus)は、ゴールデン・ランスヘッドの毒牙を避けることができた。また、ゴールデン・ランスヘッドが、ムカデやトカゲなど他の生き物を捕食していることは観察されているが、これは食料のほんの一部でしかないようだ。

ゴールデン・ランスヘッドが移動性のスズメ目の鳥を好む傾向は、必要性によって促進された。哺乳類が皆無で、爬虫類もほとんどいないなかで、ゴールデン・ランスヘッドは、外科手術のような正確さで渡り鳥を標的にするように進化した。その毒は、「ランスヘッド(槍の頭)」の名を持つどのヘビよりも速効性があり、鳥はすぐに(多くは飛び去る前に)飛べなくなる。

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翻訳=緒方亮/ガリレオ

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