世界で戦うためのクリエイティブ組織
CEKAIは2013年に、当時日本ではまだほとんど無かった自律分散型組織として、独立したクリエイターたちのためのアソシエーションを標榜し法人設立された。約100名と広がった在籍メンバーそれぞれがプロジェクト単位で多様な制作を行う中、2022年には井口を筆頭に CEKAIの主要人物たちがニューヨークへ移住し、US法人設立などの環境を整え着々と次なる戦いへの準備を行なってきた。
そして来るべき時が来た。Sphereのようなプロジェクトに取り組むには、個人の才能だけでは不十分だ。必要なのは、「世界と戦える体制」だった。CEKAIは今回、前人未到の3本の映像を同時制作するにあたり、グラフィック、設計、演出、アニメーションといった役割を専門的に分担するハリウッドに代表されるような分業体制を採用。さらに日本・アメリカ・インドネシアの複数拠点を同時並行で動かす、国際的なプロジェクトマネジメントを実現した。
「井口はクリエイティブディレクションと同時に、ゾートロープをテーマにした映像の演出を担当し、コラージュテーマはデザイン力の高い強い牧野淳さん、そしてイラストレーションテーマは以前にミュージックビデオで組んだインドネシアのArdhira Putraさんに、今回の演出をお願いしました。また前後のクリエーションパートにはNY在住の寺部晶さん、アニメーションでMontBlanc Pictures、CGや最後の仕上げの部分はKhaki、設計の部分をLUDENSなどが軸になってくれました。彼らのスピードと技術力がなければ、ここまで到達できなかったと感謝しています。通常はクリエイティブディレクター井口の個人のスキルに依存する作品となるものが多いのですが、今回、Sphereに対峙するために分業を迫られました。結果、米国拠点のエグゼクティブプロデューサー渡辺から、この分業こそハリウッドでも行われているプロダクションと通じるものがあると言われ、必要に応じて組んだ分業体制が自ずと世界基準でコンテンツを作る座組に近づいていました」とプロデューサーの三上は振り返る。
三上はSphereとの契約に至るまでには数年単位の歳月がかかったことも教えてくれた。Sphereのコンテンツを制作するには、Sphereの厳格なクオリティコントロールをクリアする組織として、Sphereの母体であるMSG(Madison Square Garden)にCertified Vendorとしてライセンス認定されないといけない。国際契約の交渉から納品形式の調整、法務的な整備に至るまで、すべてを自社で構築していったという。このプロセスを通じて、CEKAIは国際的にトップと認められているSphereから信頼されるクリエイティブチームを完成させた。
フレームレス、球体へのクリエイティブの挑戦にプラスして、Sphereプラットフォームにアクセスできる組織になるには長期となるライセンス審査も突破する必要がある。これを経たCEKAIは名実ともに世界一のクリエイティブ集団と言えるだろう。



