ヘルスケア

2025.04.26 08:15

ペットとの秘密の会話と幸福度、10代の孤独と癒やしの関係

Getty Images

Getty Images

思春期には、周囲の価値観のズレから疎外感を覚えることがよくある。そんな孤独な状況でもウェルビーイング(充足感や幸福感)を保っていられる人がいるのだが、その人たちはイヌやネコに心の内を明かしていたことが調査によってわかった。

周囲の社会に馴染めず孤立した気分のときも、自分のことを無条件に受け入れてくれるペットは社会的疎外感による精神的健康への影響を軽減する可能性があるという。そこで麻布大学、京都大学、東京都医学総合研究所からなる研究チームは、高校生と大学生を対象に、イヌやネコとの関わり方、社会的疎外感(文化的離反尺度)、ウェルビーイングに関するアンケート調査を行った。

そのデータから文化離反とウェルビーイングの平均値を割り出し、それをもとに回答者を4つのグループに分けた。さらに、文化的離反が高くウェルビーイングも高いグループと、社会的離反が高くウェルビーイングが低いグループの動物観やペットへの愛着の違いを調べた。

その結果、社会的離反が高いがウェルビーイングも高いグループは、イヌやネコに高い親密な愛着スコアを示し、ペットに「大事なことや心の内を打ち明ける」ことが多い傾向にあった。また、環境への強い関心がありながら、環境や野生動物に対して人間中心的な考え方を持つこともわかった。ここから、「自己開示の対象として伴侶動物が機能することで、思春期の精神的健康をサポートしている可能性」が示されたということだ。

興味深いのは、ペットを親密に思いながらも人間中心的という矛盾して見える点だ。研究チームは、イヌやネコを相談相手とする関わり方は、彼らを「自分の投影あるいは延長」として扱い、自分の価値観に従って関係を構築している点で人間中心的だと解説している。おそらく本人は、それが人間中心的な行動だなんて気づいていないはずだ。いずれはアニマルウェルビーイングにも目覚めてほしいところだが、虐めているわけではないし、思春期の心の癒やしは重要だ。

こうしたイヌやネコに心の内を打ち明けることによる個人の心理的、生理的変化をさらに研究することで、そのヒトの精神的健康をサポートするメカニズムの解明が期待できるとのこと。そのノウハウは、ペットロボットにも大いに活かされることだろう。ロボットなら人間中心的でもまったく問題ない。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事