ノーコード革命
ミッタルとの対話においてアリビサトスは、現在、最も破壊的な変化の一つとして、ノーコード開発に言及した。
昨今、進んでいるノーコード開発を広げる動き、すなわちノーコード運動は、新しいLLM(大規模言語モデル)の登場により、プログラミングの知識なしでソフトウェアを開発できる時代が初めて到来したことを意味する。
1970年代以降、コンピュータを使いこなすにはFORTRANやCOBOLといったプログラミング言語の習得が不可欠だった。しかし、今ではAIに指示を与えるだけで、完璧なソースコードが手に入る。
これはAIの能力によって推進されているものの、人間の手作業による前例がないわけではない。HTMLがその好例だ。インターネット黎明期には、ウェブページを作るのには自分でHTMLを書く必要があった。しかしDreamweaverなどのツールが登場すると、ウェブマスターは「ノーコード」方式で(直接HTMLを見ることなく)サイトを構築できるようになった。
現在のノーコードは、さらに根本的な変革をもたらしている。エンドユーザーは「技術者」である必要はなく、AIとの対話方法さえ理解していればよい。
基金と投資
人工知能が注目を集める現在でも、人文学研究を支援する重要な動きは続いている。
全米人文学基金(NEH)は、人文学研究への助成を行う様々なプログラムを運営している。
たとえばNEHの新しい「人工知能人文学研究センター助成プログラム」は、AIの倫理的、法的、社会的影響に焦点を当てた人文学研究所の設立を支援するもので、大学や独立研究機関にそれぞれ最大75万ドル(約1億1000万円)を提供する。
連邦政府の資金をめぐる混乱はあるものの、こうしたプログラムはアメリカ経済において人文学を支援する数多くの取り組みの一例にすぎない。
こうした動向についてアリビサトスは、AIは機会を奪うのではなく変革するものだと主張する。イノベーションの方法や、人間としての個性の発揮の仕方に変化をもたらしているというのだ。
「私には、学生たちにとってあらゆる場面で機会が拡大しているように見えます」と彼は言う。「知識をより効果的に活用できるようになったことで、新たな可能性が生まれています。機会が減るどころか、むしろ増えているのです。ですから学生もデロイトもこの瞬間を恐れず、未曾有のチャンスだと捉えるべきだと思います」
これらすべてが示唆するのは、AIが認知や主体性の面で人間に迫るなかでも、人間らしさを守り抜こうという決意だ。今後の展開が注目される。


