ヘルスケア

2025.04.22 11:30

睡眠薬や抗不安薬のベンゾジアゼピン系薬剤、過剰処方を防ぐために

Getty Images

女性向け精神安定剤が正当化された1950~60年代

ベンゾジアゼピン系薬剤の過剰摂取は単に医学的な問題ではなく、文化的な問題でもある。「女性を鎮静させて扱いやすくする」という考えは、ジアゼパムなどの薬が「ストレスを抱えた主婦」の解決策として販売されていた1950~60年代にまでさかのぼる。

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1962年に結成した英ロックバンド、ローリング・ストーンズの曲『マザーズ・リトル・ヘルパー』でよく知られているように、この時代は家庭内のストレスに悩む女性たちの間で精神安定剤が広く処方されていた。現代では、一部のテレビ番組やソーシャルメディア(SNS)上のインフルエンサーがベンゾジアゼピン系薬剤の使用について、日常のストレスへの気軽な対処法として紹介していることもある。

女性、特に専門職に就いている女性や母親は「すべてをうまくやり遂げる」ことが期待されており、困難な状況にある時には薬物療法が唯一の解決策と見なされることが多い。しかし、問題の解決には医薬品以外のものも求められる。女性の多面的な要求に根本から取り組む体系的な変化が必要だ。

手つかずの改革

こうした悪循環を断ち切るために、医療界は次のような行動の呼びかけと早急な改革が求められる。

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・処方慣行の見直し:不安症や不眠症に対して反射的にベンゾジアゼピン系薬剤を処方する慣行を見直す。医師は短期的な緩和のみに同薬剤を処方し、処方の際には明確な減薬計画を伴うべきであることを再確認する。

・医師による定期的な再評価の義務付け:ベンゾジアゼピン系薬剤を服用している患者は、自動的に更新される処方箋に頼るべきではない。薬剤の継続的な使用が必要かどうかを評価するために、医師による定期的な診断が必要だ。

・非医薬品治療の機会の拡大:医療界は、認知行動療法やマインドフルネスに基づくストレス軽減などの非医薬品治療を優先する。

・離脱の難しさに関する患者への説明:患者には、離脱の難しさや安全な減薬方法など、ベンゾジアゼピン系薬剤の危険性について十分な透明性が確保されるべきだ。

・女性の精神衛生に関する文化的な語られ方の変革:これはより広範で複雑な議論になるが、女性の不安を理解しようとせず、「鎮静化させるべきもの」として扱うのをやめることが重要だ。

女性は、不安症を治療せずに生きるか、長期間服用すべきではない薬に依存するかの選択を迫られるべきではない。ベンゾジアゼピン系薬剤の過剰処方は単なる個人の責任ではなく、公衆衛生上の危機として扱われるべきだ。

治療法を継続的に変革していくことで、女性の不安に対する薬物療法への依存から脱却し、有意義で長期的な支援へと進むための重要な一歩になるかもしれない。この問題を無視すると、薬物依存が定着し、今後何世代にもわたって社会的な固定観念が永続化するリスクがある。現在の中心的な課題は、体系的な変革を早急に実行するための集団的な能力だ。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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