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2025.04.24 09:30

高騰する音楽フェスチケット、懐に余裕がない米若者世代の後払い「BNPL」頼み鮮明

Lady Gaga / コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2025(Kevin Mazur / Getty Images)

若者の生活苦のサイン?

BNPL人気の高さは一見、消費者が資金繰りに窮しており、高額な「コト消費」の代金を前払いできない状況にあることを示唆している。コーチェラの参加者層はZ世代とミレニアル世代が中心で、賃金の伸び悩み、インフレ、学生ローン負債といった世代特有のプレッシャーに直面している。消費者金融保護局によると、BNPL利用者の43%が直近1年間に預金残高以上の買い物をしてしまったと答えている。

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BNPLの利用率は全国的に上昇している。2023年の取引額は約750億ドル(約10兆6800億円)だったが、2027年には1140億ドル(約16兆2300億円)に達すると予想されている。ブルームバーグが2024年に行った調査では、BNPL利用者の54%が身の丈を超えた出費をしたと認め、24%が「手に負えない」状況に陥ったと回答した。

もっとも、BNPLは必ずしも生活苦のサインというわけではない。戦略的に活用すれば、手元の流動性を確保したり、コストを分散しながらクレジットカードの特典を得たりできる。コーチェラの提供するBNPLプランの手数料はチケット代の8%で、クレジットカード金利の年率20%より安く、自制しながらお金を使う人にとっては賢い選択だ。アイコニックなカルチャーを誇るコーチェラの雰囲気はFOMOを誘発し、参加者に節約よりも体験を優先させる。

BNPLの利用拡大、懸念は

米国でクレジットカードの債務残高が記録的な高水準にあり、支払い滞納件数も増加している事実と併せて考えると、BNPLの利用拡大は消費支出の健全性に関する重大な懸念を生じさせる。2024年10〜12月期の米カード債務残高は過去最高を記録。返済期日を90日以上過ぎた延滞債権の比率も7.18%と、前年同期の6.36%から上昇した。

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従来のクレジットカード債務と異なり、BNPL債務の大半は信用情報機関に報告されないため、標準的な信用評価では見えてこない「幻の債務」と化す。負債比率やクレジット・スコアにBNPLの残高が反映されないため、信用報告書の記載以上に消費者が経済的に追い詰められているおそれがあるのだ。

調査によると、BNPL利用者の5人に1人が生活必需品の購入を後払い決済に頼っており、支払いを滞納したり返済のために他から借り入れをしたりしている人も無視できないほど多い。Affirmなど一部のBNPL業者は信用情報機関への報告を始めたが、まだ業界のスタンダードとはなっていない。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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