コーチェラ一般入場券、6割がBNPL決済
日ごろ倹約に努めているのに、楽しみやワクワク感を得られる「感動体験」は高額でも逃したくない、という若者たちの金銭感覚は、カリフォルニア州の砂漠地帯で開催されたコーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2025の随所で見られた。特に、高騰するチケット代とフード代をまかなう方法に顕著なトレンドが現れている。
コーチェラの一般入場券の約60%が、BNPLプランを通じて購入されたのだ。宿泊やグッズ購入にBNPLを利用した参加者も多かった。これらの費用は、週末なら1000ドル(約14万円)を超える。支払いを終えるまで数カ月かかるBNPLに頼る人がこれほど多いと、疑問も生じる。これは、消費者の懐に欲求を満たす余裕すらないことの証なのだろうか。米国には家計がぎりぎりの世帯も少なくないようだ。
コーチェラの支払いプランは、AXSなどのチケット販売プラットフォームを通じて提供されている。今年の一般入場券価格は599ドル(約8万5000円)だったが、BNPLプランならわずか49.99ドル(約7000円)の頭金と手数料41ドル(約5800円)を支払えばチケットを確保できた。決済サービス事業者が利用者の購入代金を立て替えて小売業者に支払う従来のBNPLとは異なり、コーチェラのシステムでは購入者が月賦で残金を返済し、運営元とチケット販売業者が収益を折半する。
チケット代だけでなく、ホテル宿泊費やコーチェラ名物のフェスファッションにかかる衣装代、タコスとレモネードで100ドル(約1万4200円)する食費などにもBNPLを利用する参加者が相次いだ。そこには、限られた予算でフェス体験をめいっぱい楽しもうという強い意志が感じられる。
こうした傾向はコーチェラに限ったことではない。「ロラパルーザ」や「ボナルー」といった他の音楽フェスでも、チケット売り上げの半分以上が分割払いだ。コーチェラは2009年に後払いプランを導入しており、利用率は当初の18%から2025年には60%へと急増した。フェス参加者にとって「おいしい」プランなのは確かだ。特にインスタ映え探しに余念がない20代の若者にしてみれば、初期費用を抑えられるので高額イベントに参加しやすくなる。


