食&酒

2025.04.29 15:00

建築家、大阪万博に挑戦す|藤本壮介×小山薫堂スペシャル対談(後編)

小山:藤本さんは好きなものをつくってよいと言われたら、何をつくりたいですか。

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藤本:自由につくれるのであれば、小さな町をつくってみたい。人間の生活ってすごく複層的なのに、建築はその一部にしか関われないのが、非常に残念だなと常々思っていて。生活が複雑で多様で豊かになるような町なり共同体をつくれたら、すごくワクワクするのではないかなと思いますね。

小山:小さな町といえば、長崎にある軍艦島(正式名称は端島)の開発に最初に関わったのは、実は僕の高祖父なんです。

藤本:三菱ではないんですか?

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小山:最初は熊本・天草で土木事業をやっていた高祖父の小山秀之進が、トーマス・ブレーク・グラバーとの縁から端島を炭鉱として開発しようとした。でも、大きな台風に見舞われて水没し、破産して天草に帰ってきたんです。

藤本:そんなエピソードが!

小山:最近、生活における幸せとはどういうことなのか、よく考えていて。特にいまは便利さが幸せの手段のようになっていて、なんでも自動化するとか。でも、そうではない町のつくり方があるんじゃないかなと。

藤本:20世紀は合理性の時代で、それが人間の本質と合っているように思えたけれど、どうもズレが生じてきていますよね。そんな時代に建築側からもどういう場をつくれるのか……。今後の課題かもしれません。

小山:例えば徳島県の「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」は、ゴミ分別処理場に教育・研究・発信・宿泊機能を付与したことで、観光地になった。暮らしの機能が観光資源になるようなものを、ぜひ藤本壮介デザインでやってほしいですね。

今月の一皿

1970年の大阪万博会場で人気を博したという「ミラノ風チーズ焼きスパゲティ」を、料理人ゴローがアレンジ。

Blanc

都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。


藤本壮介◎1971年、北海道生まれ。東京大学工学部建築学科を卒業。2014年、仏・モンペリエ国際設計競技にて最優秀賞を受賞するなど、世界各国の国際設計競技で多数受賞。2025年大阪・関西万博では会場デザインプロデューサーを務める。

小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。

写真=金 洋秀

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