アート

2025.04.28 08:30

「わかる・わからない」を超えて 感性を磨く現代アートとの付き合い方

マウリツィオ・カテラン 「コメディアン」(Getty Images)

レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる「サルバトール・ムンディ」は2017年、クリスティーズのオークションで史上最高額の4億5000万ドル(当時の価格で510億円)で落札された。購入したのはサウジアラビアの皇太子ムハンマド・ビン・サルマン。その後、作品は公に姿を見せていない。
レオナルド・ダ・ヴィンチ作とされる「サルバトール・ムンディ」は2017年、クリスティーズのオークションで史上最高額の4億5000万ドル(当時の価格で510億円)で落札された。購入したのはサウジアラビアの皇太子ムハンマド・ビン・サルマン。その後、作品は公に姿を見せていない。(Getty Images)

服部:最も高額で落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」は、ピシッと修復されて“コンテンポラリーアート”として出品されましたが、元のままのほうが余白があり、もっと美しい人物像を想像させたかもしれないですね。

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保坂:ペインターは、次につながりそうな気配を感じられたら筆を止める、と言いますよね。完璧=良い作品ではない。

服部:今展示しているケネス・ノーランドはまさにそうで、平面だけで多様なチャレンジをしています。

──アートとのかかわり方についてアドバイスをするとしたら?

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保坂:個人で言えば、作品を買ってみること。身近におくことで、なぜ買ったのか、どこが好きなのか、自分を顧みる鏡になります。高い作品である必要はなくて、例えばカテランだって数万円くらいから始まっているはず。美術館で「もし自分で買うなら……」という視点で鑑賞するのも面白いです。

服部:私は「タダでくれるなら」という視点で見ています(笑)。企業のアートの取り組みは、もっと積極的にキュレーターの知見を取り入れると面白いものができるのでは。法人の作品購入に関しては、100万円以下は減価償却できるのですが、その額ではなかなか良い作品は買えないので、上限が上がり、良い作家が育つ環境になればと思います。

美術館とギャラリー、それぞれの立場でアートを見るプロフェッショナルの対話は、共感し合い、補足し合いながら軽やかに弾んだ。取材会場となったPace 東京では5月6日まで、ケネス・ノーランド『Paintings 1966 - 2006』展およびサム・ギリアム『The Flow of Color』展を開催している。
美術館とギャラリー、それぞれの立場でアートを見るプロフェッショナルの対話は、共感し合い、補足し合いながら軽やかに弾んだ。取材会場となったPace 東京では5月6日まで、ケネス・ノーランド『Paintings 1966 - 2006』展およびサム・ギリアム『The Flow of Color』展を開催している。

【特集】ART & BUSINESS | 創造を刺激する「余白」の価値

見え隠れする経済合理性の限界。脱却の糸口としてアートへの関心が高まるが、それも既存の物差しで測っては意味がない。より速く、無駄なく進む先に何があるのだろうか。むしろ「非合理」に向き合うことに可能性があるのではないだろうか。非合理とは、つくり手と受け手の間に解釈の「余白」があるものと考え、その価値を知るプレイヤーたちに話を聞いた。

文=鈴木奈央 写真(人物)=若原瑞昌

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