服部:最も高額で落札されたレオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」は、ピシッと修復されて“コンテンポラリーアート”として出品されましたが、元のままのほうが余白があり、もっと美しい人物像を想像させたかもしれないですね。
保坂:ペインターは、次につながりそうな気配を感じられたら筆を止める、と言いますよね。完璧=良い作品ではない。
服部:今展示しているケネス・ノーランドはまさにそうで、平面だけで多様なチャレンジをしています。
──アートとのかかわり方についてアドバイスをするとしたら?
保坂:個人で言えば、作品を買ってみること。身近におくことで、なぜ買ったのか、どこが好きなのか、自分を顧みる鏡になります。高い作品である必要はなくて、例えばカテランだって数万円くらいから始まっているはず。美術館で「もし自分で買うなら……」という視点で鑑賞するのも面白いです。
服部:私は「タダでくれるなら」という視点で見ています(笑)。企業のアートの取り組みは、もっと積極的にキュレーターの知見を取り入れると面白いものができるのでは。法人の作品購入に関しては、100万円以下は減価償却できるのですが、その額ではなかなか良い作品は買えないので、上限が上がり、良い作家が育つ環境になればと思います。


