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2025.04.22 10:00

中国依存から抜け出せない米国の「軍用ドローン」の不都合な現実

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サンアントニオに拠点を置くDarkhiveという企業は、数カ月にわたって審査結果を待った末、2月に承認を拒否された。「『来年また申請しなおすように』と告げられた以外のフォローアップはなかった」と、同社のジョン・グッドソンCEOは述べている。

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国防総省による中国製部品の禁止措置は、機体やバッテリーなどの部品には及んでいないが、こうした部品を中国に依存することこそが、むしろ最も重大なリスクになる。昨年10月、中国は、米国のドローンメーカーSkydioを制裁対象に指定し、同社へのバッテリー供給を遮断した。Skydioは、a16zやアクセルなどの投資家から8億5000万ドル(約1200億円)以上を調達している米国最大規模の小型ドローンメーカーだが、これを受けてバッテリーのサプライヤーを確保できなくなった。

「中国政府が自国の利益のためにサプライチェーンを武器化する用意があることは明白だ」とSkydioは声明で述べた。それから6カ月が経過した現在も、同社は新たなサプライヤーを発表できていない。

最大手DJIを排除できない米国

一方、軍関係者や安全保障の専門家、ドローン業界の関係者の意見が、いずれも一致している点がある。それは、中国製部品に頼らないサプライチェーンを築くためには、中国メーカーのDJIを米国から排除することが必要だという点だ。

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深圳を拠点とするDJIは、中国政府からの多額の補助金に加えて、米国のVCであるアクセル・パートナーズやクライナー・パーキンス、さらには、かつて中国に拠点を置いていたセコイア・キャピタルなどの支援によって、世界最大のドローンメーカーとなった。その結果、DJIは現在、米国で最も普及しているドローンブランドになり、警察や農家にも幅広く採用されている。

「DJIが完全に禁止されない限り、米国製ドローンの産業基盤は確立できない」と、軍用ドローンの導入促進を目指す全米ドローン協会のネイサン・エセルバーガー会長は語る。しかしDJIは、米国での禁止措置を回避するための取り組みを、これまでのところ成功させている。

DJIは、商務省が提案した中国製ドローンおよび部品の輸入禁止ルールに対して、「当社の多くの米国のステークホルダーに対して著しい悪影響を及ぼす」と抗議した。同社はまた、昨年10月に国防総省を相手取り、同社が「国家安全保障上の脅威ではない」と主張する訴訟を起こした。さらに、同社製品の輸入を禁止する法案に反対するためのロビー活動を行ってきたことが、開示資料で明らかになっている。DJIは、フォーブスに宛てた声明で、「私たちは中国にルーツを持つという理由で、不当にターゲットにされてきた」と主張した。

昨年12月に米国議会で可決された国防権限法(NDAA)には当初、DJIを含む中国企業の新型ドローンの米国内の販売を禁止する条項が含まれていた。しかし、この条項は、DJIが米国市場で幅広く使用されていることや、禁止措置が農業や救助活動、映画制作などの多岐にわたる分野に悪影響を及ぼす可能性があることを理由に、最終的な法案から削除されていた。

DJIは、12月19日の声明で、同社の禁止措置の回避のための努力を後押しした関係者への謝意を表明し、とりわけ米国の顧客たちに感謝していた。「顧客のみなさんの支援が大きな違いを生みました。議会の当局者たちは、みなさんの声に耳を傾けてくれたのです」と同社は述べていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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