桜が散ると途端に暑くなる昨今、本格的な夏を待たずして熱中症のリスクがどんどん高まっている。熱中症対策にはいろいろあるが、9割の人たちが知らない大切な対策がある。今の時期から暑さに体を慣れさせる「暑熱順化」だ。
総務省の発表では、去年の5月から9月にかけて熱中症で救急搬送された人の数は全国で9万7578人と、統計を開始した2008年以降最高を記録したとのこと。すでに5月の段階で2799人が搬送されているという。温暖化が進む今年はさらに増えるものと覚悟しておくべきだろう。そこで日本赤十字は、全国の10代から60代の男女1200人を対象に熱中症に関する意識調査を行った。それによれば、さすがに日本人の熱中症に対する意識は高かいことがわかる。
熱中症の症状のイメージを聞くと、非常に危険だと理解している人が約85パーセントと多い。ところが、熱中症と診断されたり暑さで体調を崩した経験のある511人に暑さ対策をしていたかを尋ねると、約7パーセントが「万全を期していた」、約76パーセントが「自分なりに対策しているつもりだった」と答えている。8割以上の人が何らかの対策をしていたにも関わらず体調を崩してしまった。
問題は対策を始める時期だ。ほぼ8割の人が5月から7月に開始している。とくに本格的に暑くなり、メディアで熱中症関連の話を耳にする7月にようやく始める人が多い。それでも体調を崩してしまうとなれば、何かが足りないことがわかる。それが「暑熱順化」だ。暑さに体を慣らし、体温調節機能を夏モードに切り替えることで熱中症のリスクを低減させるという対策法だ。簡単に言えば、汗をよくかける体にすること。
この調査によれば、暑熱順化の認知度は、きちんと知っている人はわずか12パーセント、聞いたことがあるが意味は知らないという人が約24パーセント、残る約65パーセントは聞いたこともないと答えている。
日赤東京都支部の齊藤紀彦救護課長は、「熱中症は予防でゼロにできる唯一の病気とも言われ、予防に重点を置くべき」と指摘している。「普段からやや暑いと感じる気温のもとで軽く汗ばむ程度の運動を日常から行う」のが有効ということだ。
日本赤十字社では熱中症の救護法や予防に関する講習会を実施しているので、受講してほしいと訴えている。詳しくは日本赤十字社のウェブサイトで確認してほしい。また、厚生労働省は、暑熱順化の大変にわかりやすい講習用スライドを公開しているので参考にするといいだろう。



