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2025.04.25 16:00

食卓を囲むことは幸福の要因となるか?──World Happiness Report 2025が解き明かす「食」と幸福の科学的関係

写真提供:味の素株式会社

写真提供:味の素株式会社

「食べ物や栄養と身体的なWell-being、つまり健康との関係はよく研究され理解されていますが、人々がどのように料理をし、食事をするかということと、主観的Well-being、つまり幸福感との関係についてはあまり研究されてこなかった」

2025年3月にワシントンD.C.で開催されたWorld Happiness Reportに関するイベントで、味の素社 前執行役常務サステナビリティ・コミュニケーション担当 森島千佳はこう語った。


2025年3月、英オックスフォード大学ウェルビーイングリサーチセンター、ギャラップ、国連の持続可能開発ソリューションネットワークが共同発行する「World Happiness Report(世界幸福度報告書)」に、初めて「食」に関する章が設けられた。この画期的な動きの背景には、ギャラップ社と味の素社による2022年の共同調査がある。同調査では、料理を楽しむ人々のウェルビーイング実感は、楽しまなかった人と比べて20%も高いことが判明。さらに、「共食」の頻度が高い人ほどウェルビーイング実感の高い人が多い結果となった。

オックスフォード大学ウェルビーイングリサーチセンターの所長で、オックスフォード大学の教授、ヤン=エマニュエル・デ・ネーヴは先のイベントで、「今年のレポートのテーマ『思いやりと分かち合い』は、ギャラップ社と味の素社の共同調査から着想を得ました。『過去1週間で、誰かと昼食もしくは夕食を共にした回数は、何回でしたか?』という一見シンプルな質問が、人々の社会的結びつきの強さを測る重要な指標になることに気づきました」と語っている。

この「食と幸福」の関係性について、行動経済学者の大竹文雄と霊長類研究の第一人者である山極壽一が、それぞれの専門分野から深い洞察を示している。レポートの結果を追いながら、現代社会における、私たちの幸福度向上への重要な鍵を握る「食」の本質について、改めて見ていきたい。

レポートが明らかにした「食と幸福」の関係性

今年発表された「World Happiness Report 2025」では初めて、142カ国・地域で集められたギャラップ社と味の素社の共同調査データをもとに、共食と主観的幸福度の関係が新たに、そして詳細に分析されている。特に注目すべき点は、共食の頻度と幸福度の強い相関関係だ。レポートによれば、共食の回数が多い人は、生活満足度が高く、ポジティブな感情が多く、ネガティブな感情が少ないという明確な傾向が示された。

具体的には、週に一度も共食しない人と比較して、週に一度でも誰かと食事を共にした人の生活満足度は0.3ポイント高く(10段階評価中およそ5.1ポイント)、失業によるウェルビーイングの低下が0.6ポイントだったことを踏まえると、有意義な差であると指摘している。さらに、週に一度も共食しない人の生活満足度がおよそ4.8ポイントだったのに対し、週に9〜10回共食する人は平均して5.7ポイントの生活満足度を示し、週に13回共有する人々では6.1ポイントに上昇する、という結果が報告されている。

ギャラップ社と味の素社の共同調査の結果について、行動経済学者の大竹文雄は「イケア効果」「利他性」「共有体験」という3つの概念から解釈している(記事参照)。「イケア効果」とは、自分で組み立てたり手を加えたりした物に対して客観的価値以上に高く評価する心理的バイアスのこと。実際、今回のレポートのデータでは、料理を楽しむ人々は食事だけでなく、その過程も楽しむ傾向が示されており、共食頻度が高い人ほど料理を楽しんでいるという関連も確認された。

共食の頻度が高いほど、料理や食を楽しんでいるという回答が多い

また、誰かのために料理をすることに関連する「利他性」も重要な要素だ。レポートでは特に、肯定的互恵性(他者への善意に報いる傾向)が共食と強く関連していることが明らかになった。

社会的つながりと食文化の関係

レポートでは、米国時間使用調査(ATUS)の2003年から2023年までのデータを分析し、アメリカ人の「孤食」傾向の推移も取り上げている。この20年間で、すべての食事を一人で摂る人の割合は53%も増加し、2023年には約4人に1人(26%)がすべての食事を一人で摂っていることが明らかになった。

特に注目すべきは若年層の変化だろう。25~34歳の若者が一人で食事をする割合は、この20年間で180%以上も増加している。この変化の要因として、単身世帯の増加(全体の15-20%)のほかにも、デジタル化やライフスタイルの変化が影響していると分析している。

前日のすべての食事が孤食だった人と、1食以上は共食だった人の平均的な生活満足度を比較したもの

共食と社会的つながりの関係についてはどうだろうか。レポートによると、より多くの食事を共有する人々は、孤独感が低く、社会的なつながりが強いという明確な関連が示された。週に一度も食事を共有しない人は約35%が「昨日一日中孤独を感じた」と回答したのに対し、週に12回以上共食する人々では、この割合が約15%まで低下する。

共食の回数が多いほど、孤独感の回答が減り、社会的なつながりがあるという回答が増える

山極壽一は共食と幸福度の関係について、人類進化の観点から「社会脳」の発達と関連づける(記事参照)。山極によれば、食事を共にすることは言語を超えたコミュニケーションであり、同じ食事を楽しむ共有体験が人々を結びつける基盤となる。これはレポートが示す共食と社会的つながりの強い相関関係と合致している。

さらにレポートでは、共食と幸福度の関係が、所得や雇用と同等かそれ以上に強いことが示されている。特に驚くべきは、共食が収入や雇用状況といった従来重視されてきた指標と比較しても、幸福度を説明する強力な変数となっていることだ。

味の素社ではこうした知見をもとに、日経ウェルビーイングイニシアチブの参画企業と共に、日本政府のウェルビーイングのフレームワークに「食」の項目を入れるよう働きかけているという。大竹も「食はウェルビーイングに影響を与える要因として、所得、健康、社会的つながりの中で比較的コントロールしやすいもの」と指摘しており、食を通じた幸福度向上の可能性を強調する。

今回のレポートは、共食の持つ社会的価値が今後さらに重要になる可能性も示唆している。山極も「食事に時間をかければかけるほど、人と人との信頼関係が深まる」と指摘するように、AI社会が進展する現代において、効率性や生産性とは異なる価値を持つ「食」の意義は、むしろ増大していくと考えられる。

レポートが示す「共食する人ほど食事そのものも楽しむ」という結果は、デジタル化が進む社会において、リアルな共有体験がもたらす多面的な幸福の価値を示している。味の素グループが「ギョーザ」のような冷凍食品や「Cook Do®」のようなメニュー用調味料などを通して提案する「手間抜き」の考え方は、こうした科学的知見に基づく現代的な食文化の再構築と捉えることができるだろう。

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「World Happiness Report 2025」に初めて設けられた「食」の章は、味の素社とギャラップ社の共同調査データを基礎としながら、食事共有と幸福度の関係について包括的な視点を提供している。食事の共有が幸福度に与える影響は地域や年齢、性別を超えて普遍的であることが科学的に示され、特に社会的つながりとの関連性が浮き彫りとなった。

前出のオックスフォード大学の教授、ヤン=エマニュエル・デ・ネーヴは、自身も編集者の一人として参加した本レポートについて、次のように評価している。

「今年のレポートは、健康や資産といった、これまでウェルビーイングの要因として重要視されていたものを超えた先に目を向けさせました。食事を共にすること、そして相手を信頼することは、予想以上に私たちの幸福度に影響するものなのです。この社会的孤立と政治的偏向の時代に、私たちは再び人々が食卓を囲む方法を見つけていかなければならないのです」

ヤン氏も指摘する通り、今回の報告は、単なる栄養摂取や味覚の満足を超えた「食」の多面的な価値を再評価する契機となるだろう。「料理を楽しむ」「共に食べる」という行為が科学的に人々の幸福度向上に貢献することが示された今、私たちは食を通じた幸福度向上の可能性を改めて考える時期に来ているのではないだろうか。


味の素株式会社
https://www.ajinomoto.co.jp/

World Happiness Report 2025
https://worldhappiness.report/

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