小さな動きが大きな潮流へ
アンソロピックが2024年後半にMCPを導入した当初、これはあくまで1社が抱えていた技術的課題に対する解決策にすぎなかった。ところが予想外のことに、開発者コミュニティがこれを受け入れた。Google ドライブやSlack、GitHub(ギットハブ)、各種データベースなど、多様なサービスとAIを連携させるための実装が次々に生まれ、個人のファイルや企業のシステムにAIが直接アクセスする仕組みが整い始めたのだ。
そしてアルトマンの投稿ひとつによって、MCPは1企業のソリューションから業界標準へと一気に跳躍した。
こうした「小さなイノベーションが業界全体の土台に成長する」パターンは、技術史では決して珍しくない。TCP/IPがインターネットの基盤になり、JSONがデータ交換でXMLを置き換えたように、採用とネットワーク効果が相乗的に働くことで、特定の課題を解決するソリューションがいつしか業界全体の基礎となるのだ。
AIとデジタル世界を隔てていた壁が崩れ始めている
MCPは、AIアシスタントが何をどこまで行えるのか、そしてデジタル世界とどう関わっていくのかを根底から変え得る存在だ。MCPによって、AIは学習済みのデータに依存するだけでなく、リアルタイムの情報を取りにいき、許可されたプライベートデータへアクセスし、ほかのシステムとも相互に作用できるようになる。
本当に強力な技術とは、日常生活に溶け込み、意識せずとも使われる状態になるものだ。MCPはAIをその段階へ導くためのプロトコルかもしれない。AIは意識して使う「興味深いツール」から、デジタル環境とシームレスにつながり、人間の能力を自然に拡張する「目立たないアシスタント」へ移行するきっかけになり得る。
AIシステムとデジタル世界を隔てていた壁は、今まさに崩れ始めている。


