「MCP」は、USB-Cコネクターのように標準化の力をAI分野にもたらす
技術の歴史はある意味、「標準化の歴史」でもある。USBが登場する前は、多種多様なポートやコネクターを使い分ける必要があった。HTTP(エイチティーティーピー)が普及する以前は、ネットワークで情報をやり取りするたび、データの種類ごとに別のプロトコルを用いなければならなかったし、SQL(エスキューエル)が台頭する前はデータベースは互いにまったく異なる言語を話していた。
MCPが目指すのは、こうした標準化の力をAI分野にもたらすことだ。マイクロソフトのEducator Developer Blog(教育者向け開発者ブログ)に寄稿した開発者は、「MCPをAI用のユニバーサルなUSB-C(USB Type-C)コネクターだと考えてほしい。言語モデルが必要な情報を取得し、APIと対話し、学習時の知識を超えたタスクを実行できるようにするからだ」と述べている。
このプロトコルは、単純なクライアント・サーバー・アーキテクチャーを通じて機能する。開発者は、自身のデータソース(ファイル、文書、データベース、API)を公開するMCPサーバーを構築でき、AIシステムはクライアントとしてこれらのサーバーに接続し、必要に応じて情報やアクションを要求できる。これを革命的にしているのは、技術的な洗練度(構成要素はかなり標準的なウェブ技術である)ではなく、むしろ標準化そのものである。
予想外の協調
このプロトコルが備える技術的な特徴以上に興味深いのは、企業間の動きである。一般にテクノロジー企業は、競合他社の提唱する標準規格を積極的に採用しようとはしない。実際、業界の歴史を振り返ると、ユーザーを自社のエコシステムに囲い込む「独自仕様」や「壁に囲まれた庭(ウォールドガーデン)」を作る例が数多く見られる。
それにもかかわらず、先週サム・アルトマンは、アンソロピックが策定したプロトコルをOpenAIが実装すると発表した。いったい何が起きているのだろう。
手がかりは、生物学でいう「収束進化(収斂進化)」という現象にあるのかもしれない。これは異なる種が同じ環境的圧力にさらされているとき、それぞれが独立に類似した特徴を身に付けるという現象だ。両社は、AIが外部データを取り込まなければ本当の価値を発揮できないという課題を共に認識していたのだろう。
アンソロピックのマイク・クリーガーは、先のアルトマンの発言に対して、「MCPへの支持がOpenAIにまで広がっているのを見られてうれしいです――MCPへようこそ!」「MCPはすでに何千もの統合が行われており、ますます拡大を続ける活気あるオープン標準になりました」と返信している。
Excited to see the MCP love spread to OpenAI – welcome! MCP has gone from a glimmer in @jspahrsummers and @dsp_’s eyes last year to a thriving open standard with thousands of integrations and growing. LLMs are most useful when connecting to the data you already have and software… https://t.co/pS67BAaFvF
— Mike Krieger (@mikeyk) March 26, 2025