マルサスの著作が出版されてから、世界の人口は8倍以上に増加しているが、生活水準はそれ以上に向上している。2世紀前には人類の90%が極度の貧困に陥っていた。世界銀行の定義によれば、「極度の貧困」とは現在の貨幣価値で1日あたり2ドル15セント(約306円)未満で生活している状態のことだ。現在、世界でこの極度の貧困状態にある人々は、全人口の10%以下である。1800年には生まれた子どもの半数が5歳の誕生日を迎えることができなかった。現在は世界中で生まれた子どもの100人中96人が5歳を超えて生存している。
にもかかわらず、マルサスの考え方はずっと多数派を占めてきた。1968年にスタンフォード大学教授のポール・エーリックは妻と共著した『人口爆弾』というベストセラー書籍で、間もなく人口増加による世界的な貧困や飢餓が深刻化するだろうと予言した。悲観的な予言はそれまでだった。現在、多くの国々が人口増加を望んでいる。しかし、政府による出生率を向上させるための対策は、税制優遇措置、現金直接給付、広告活動などのいずれも、ほとんど効果が見られない。
なぜ、このようなゆるやかな出生率の低下が起きているのだろうか? 専門家は、時間と生活費のコストが子どもを産み育てるための障害になっていると指摘する。他の要因として、精神的な危機、つまり未来に対する悲観主義が作用しているのではないかという推測もある。理由はいずれにせよ、地球に住む人類の数が初めて減少に転じる時が迫っていることは確かであるようだ。


