スポーツには、人を惹きつける力がある。
ここ数年で、日本にある多くのスタジアム・アリーナの新設・改修が進み、スポーツを楽しめる機会が増えている。2025年1月時点で、全国でスタジアム34件、アリーナ45件の計画が進行。すでに、エスコンフィールド北海道、長崎スタジアムシティ、エディオンピースウイング広島などは、新たな地域拠点として、さまざまな人がスポーツを楽しむ場として、成功を収めている。さらにプロバスケットの「Bリーグ」やバレーボールリーグである「SVリーグ」の人気も目を見張るものがあり、今後もその成長は続いていくだろう。
しかしながら、往々にしてスタジアムやアリーナなどの大型の投資案件を含め、新たなテクノロジーやサービスの導入は、リスクテイクすることが非常に難しく、リスクヘッジのやり方にも限度がある。
我々、スクラムベンチャーズが注視している北米のスポーツ業界では、テクノロジーを用いて、そのリスクを分散したりヘッジしつつも、観戦体験やファンエンゲージメントを高めるイノベーションが進行中だ。その結果として、2021年における全世界のリーグ売上トップ3を占めるのはNFL、NBA、MLBとなった。
「ビジネスとしてのスポーツ」を徹底して追求
現在、北米スポーツ業界がテクノロジーと強固に結びついている背景には、「ビジネスとしてのスポーツ」の徹底した追求がある。観客動員や放映権収入が巨額なものになり、一瞬たりともファンを退屈させない工夫が収益に直結する。スタジアムの快適さ、データに基づく戦略、ファンタジーゲームやスポーツベッティングとの連動など、あらゆる新技術をスポーツに取り入れている。
また、テクノロジーを取り入れる「攻め」の方針だけでなく、インフレや人件費高騰に対応するための自動化や効率的な運営といったリスクヘッジの観点を多分に取り入れた戦略を取っているケースが多い。今回は「米国では~」と良い面だけを「出羽守」として紹介するのではなく、どのようにして彼らがリスクヘッジしているか、その全容を紹介する。
元サッカー選手のデビッド・ベッカムが共同オーナーを務めるインテル・マイアミCFには、アルゼンチンの英雄リオネル・メッシが在籍している。メッシの加入を契機に、リーグやクラブの収益は跳ね上がり、MLSの来場者数は、2024年にはJリーグを超え、Apple TVとの大型契約も成立している。この劇的な変化の裏に存在するのが、来場者の満足度向上に寄与するZippin社の無人決済技術だ。