事業承継と「お金を生む」事務所の改装
──事業承継のタイミングについて教えてください。
会社の70周年と父の70歳、私の40歳という節目が重なったタイミングで、事業を正式に引き継ぎました。その時点で、会社は無借金経営を達成しており、非常に良い状態でのスタートが切れたと思います。
──承継後、まず取り組んだことは?
社内改革に着手しました。手始めに事務所の改装を行いましたが、単なるリニューアルではなく、「お金を生む改装」を意識しました。
ショールームとしての機能だけではなく、実際に商品が購入できるショップとしてリニューアルし、来訪者に商品の背景を伝える場を設けました。工場を見下ろせるように設計し、製品がどのように作られているのかをお客様に直接見てもらえるようにもしました。
──その結果、どのような変化がありましたか?
現場の職人たちの意識が変わりました。お客様が目の前で商品を購入してくれる姿を見て、「もっと良いものを作ろう」というモチベーションが高まったのです。また品質の向上にもつながり、狙い通りの効果を得ることができました。
一方、若い方にも認知してもらったため、求人を出すと20~30代の応募が増え、会社の平均年齢は38歳になりました。2024年7月には東京にもショールーム兼ショップをオープンし、良い宣伝の場になっています。
会社をあえて大きくしない理由
──今後の会社の方針は?
今まで、特定の販売店に商品を置いてもらうことを重視していました。しかし、それは間違いだったと気づきました。販売店は商品を仕入れますが、最終的に購入するのは消費者です。今後は消費者に直接アプローチできる商品開発を進めていきます。
──会社を大きくするという目標はないのでしょうか?
私は「大きくしない」という方針を取っています。一番大切なのは、今いるスタッフを守ることです。会社が大きくなれば、それだけリスクも増えます。むしろ、少人数でも知名度のある企業を目指したいです。SNSの普及により、お客様との直接的な接点が増えてきたことも大きなポイントです。
──最後に、今後の展望についてお聞かせください。
2025年に開催される大阪・関西万博への出店が決まっております。これをきっかけに、世界の人々に藤田金属の製品を知っていただき、次世代へとつなげていきたいと思います。
藤田盛一郎◎1981年、大阪府生まれ。大学卒業後、2003年に現在勤める藤田金属株式会社に入社、2020年に代表取締役社長に就任。「ひえーるタンブラー」「フライパン物語」を開発し自社商品をヒットさせる。「フライパンジュウ」は海外からも注目され、東京のショップも人気。現在もキッチン用品をはじめ、アウトドア用品、園芸用品、インテリア雑貨などを手掛ける。藤田金属株式会社の年間売上高は約4億2500万円、従業員数19人。


