ただ、こうした努力にもかかわらず、ボフダナの生産率では依然としてトラック車台の入手可能数が主な制約要因になっているという。
現代の戦場での大砲の必要性
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2月の報告書で、ロシア軍の装備の損害はウクライナ軍の戦術ドローンによるものが60〜70%を占めるようになっていると指摘した。ドローンがウクライナ軍にとって不可欠なアセットになっているのは確かだが、この数字はウクライナ軍で大砲が不足し、砲弾なども節約されているために膨らんでいる面もあると考えられる。
OSINT(オープンソース・インテリジェンス)サイト「Oryx(オリックス)」の集計によると、ウクライナ軍の榴弾砲の累計損害数は牽引式と自走式の合計で760となっている。平均して月に20門・両失っている計算だ。これは画像で確認されたものだけなので、実際の損害数はもっと多いと推測される。
それでも、ウクライナの現在の大砲生産ペースは損害ペースを上回っている可能性が高い。国内での砲弾生産と合わせ、ウクライナの大砲は再びこの戦争で非常に重要な役割を果たすことになるだろう。
現代の戦場において、大量の大砲を配備する能力は決定的に重要な要素である。ロシア軍もウクライナ軍も、最大限の効果をあげるために大砲とドローンの統合運用を洗練させてきた。偵察ドローンはジャミング(電波妨害)が届かない高度を飛行し、高性能な光学機器を用いて敵の車両や部隊を探知する。その情報に基づいて大砲とドローンが連携して目標を攻撃し、敵部隊を制圧する。
大砲はFPV(一人称視点)ドローンに比べると命中精度が劣る半面、「砲弾はたいていのドローンよりも安価」「より重い弾頭を撃ち込める」「ジャミングに影響されない」──など、いくつかの優位性もある。
大砲は歩兵の作戦、とりわけ領域の確保を目的とした攻撃の支援でもきわめて重要な役割を果たす。ある領域を支配下に置こうとする場合、ウクライナ軍は前進してロシア軍を排除する必要がある。ドローンが重要な装備を攻撃するのに優れている一方、大砲の弾幕射撃の圧倒的な火力はロシア軍を要塞陣地や車両から追い出せる。敵の防御が弱体化すれば、ウクライナ軍の歩兵は前進し、敵の残存部隊を排除し、その領域を確保することができる。