アート

2025.04.21 15:15

フェイクニュース上等? 不確実な時代こそ「アートで経営の未来を描く」

著者チームがスペキュラティブデザインの作品「Cowboy Capsule」を制作する過程ででき上がった未来の可能性の1案。肉の価格高騰で一般の人々が口にできなくなった世界において、各地の野菜でプラントベースドミートをつくり、ビジネスとして始めようと訴える未来の広告イメージ

プロジェクトは多数の議論を呼び起こすとともに、実際に企業の戦略策定プロセスに組み込まれています。日本の長野県伊那市では2019年12月から医療機器を搭載した車両が患者の自宅などへ出向き、車内でオンライン診療をする実証事業が行われていました。

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2. NEC:「意志共鳴型社会」の未来像を描く

2017年に始動した「NEC未来創造会議」では、25年先の2050年を見据え、社内外の有識者が今後の技術の進展を踏まえ、「人が生きる、豊かに生きる」未来社会の姿を描くことを目的としています。

議論には、技術研究者から宗教者、法律家、芸術家、ゲームクリエイター、思想家まで、多様なバックグラウンドをもつメンバーが参加。現代社会の「分断」を克服し、人々が共鳴し、協力できる未来を描く「意志共鳴型社会」というコンセプトが生まれました。

このコンセプトのユニークな点は、AIやIoTといった技術のトレンドを追求するだけではなく、「人の意識の進化」とセットで考えられていることです。同コンセプトはNECの経営戦略にも影響を与え、NECはAIとブロックチェーン、生体認証技術の研究開発方針を、人間中心へとシフトさせました。

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さらに、議論の内容はメディアを通じて社会に発信され、大学や自治体などとのコラボレーションにも発展。実際にデジタル通貨を活用した社会実験なども行われています。

未来の創造成功に大事な3つのこと

未来を創造するために、次の3点が企業のリーダーにとって大事なポイントとなります。

1. 現状の制約を問い直し、未来の可能性を探る 

現実をただ受け入れるのではなく、社会通念や既存の価値観を意図的に疑い、未来に向けて新たな選択肢を模索すること。これは第3回第4回の記事で焦点を当てた世界的メディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ」の活動でも触れている観点です。

2. 異分野の知見を交差させ、新しい価値観を生み出す

デザイナーや技術者、社会学者、哲学者、法律家など、異なる高度な専門性をもった人々と協働することで、単一の価値観に依存しない未来の可能性を探ること。先述の企業事例はいずれも、さまざまな分野の専門家を巻き込んで展開されています。

3. プロトタイプを通じて、想像力を最大化する

プロトタイプまでつくり、技術の予測だけではなく、想定ユーザーやその社会背景にまで想像力を巡らせる必要があります。その結果、未来の可能性を単なるアイデアにとどめずに、より深い議論ができるのです。

著者チームが描いた起こりうる未来のシナリオ。人口爆発による需要急増や環境保全のために畜産業への規制が入ったことから、肉の値段が高騰し、ほとんどの人間が肉を手に入れられなくなった世界が広がる
著者チームが描いた起こりうる未来のシナリオ。人口爆発による需要急増や環境保全のために畜産業への規制が入ったことから、肉の値段が高騰し、ほとんどの人間が肉を手に入れられなくなった世界が広がる

不確実性の時代、経営者に求められるのは予測にもとづく適応ではなく、未来の能動的な創造です。「起こりうる、望ましい未来を創ってみる」意識をもつことが不可欠なのです。

アート思考とテクノロジーの融合は、挑戦における確かな手がかりを私たちへ与えてくれます。新しい市場機会の創出、社会的受容性の向上、異業種とのコラボレーション強化など、未来を見据えた経営判断をサポートする重要な要素になるでしょう。

文=平岡美由紀

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