市場における金の最高値(の可能性)はいくらだろうか?
金の長期的な固有価値を評価するため、過去の指標を探してみよう。1オンスの金が20ドルだった1910年に、パンの価格はいくらだったろう?
いや、ちょっと待ってほしい。その後に起きた技術の進歩は、パンの価格を当時から押し下げたはずだ。より安価な小麦と、より低い製造コストは、この比較をかなり歪めるはずだ。当時のパン1斤の値段は、基本給に基づいて調整すると、現在の2倍だった。しかも、当時は所得税がなかった。このことは、価格はさまざまな要因が混ざり合った結果であり、明確に比較するのは難しいという問題を示している。
そこで、筆者が考えた解決策を紹介しよう。できるだけローテクで基本的な活動について比較するのだ。私が選んだのは散髪だ。照明とイスと洗面台がある部屋で、ハサミを持つ人間が行う行為だ。自分と散髪屋がいて、チョキチョキするだけだ(もっといいデータを思いついた方は、コメントしてほしい)。
1910年頃、日常的な散髪の値段は25セントだったらしいが、いまでは40ドルだ。つまり160倍だ。20ドルのイーグル金貨は、金にすると1オンスだ。160×20=3200ドルで、現在の金の価格になる。
1980年には、金が843ドルを記録したが、散髪の値段は8ドルで、現在の20%だった(私の最初のクルマと同様だ)。散髪の値段が5倍になったとして考えると、1980年代の金の史上最高値は、現在で言えば1オンス4215ドルに相当すると考えられるだろう。
根拠にするにはかなり良さそうなので、このまま進めてみよう。
現時点の金価格のチャートを見てみると、これは視覚的にかなり強力なもののように見える。もちろん、「見える」というのは純粋に主観的なものだが、この種のチャートの使い途は、将来の方向性が、合理的に考えて実際の軌道に近いかどうかを判断することにある。もし近いとすれば、分析に使った根拠は、現実との相関性が高いように思われる。こうした考え方は、自分なりのセオリーについても適用できる。そもそもなぜ最初にロングまたはショートのポジションをとったか、その理由が見えてくるから、役に立つはずだ。


