日本の医療機器産業は長く貿易赤字にあり、2023年は2兆円を超える輸入超過となった。こうした状況を脱し、世界で存在感を高めていくには何が必要か。Forbes JAPANでは2023年12月、「HEALTHCARE CREATION AWARD」と称し、未来の日本の医療を牽引するであろうスタートアップ企業の表彰を行った。
審査員には、医療界の4人を招いた。
・中尾浩治 医療機器メーカーテルモで、米国テルモメディカル会長兼CEO等や同社代表取締役会長を歴任。
・内田毅彦 FDA(米国食品医薬局)で医療機器医学審査官を務めた経験をもち、サナメディ(旧 日本医療機器開発機構)の創業者でありながら現在も循環器内科医として勤務。
・小野稔 平成天皇の心臓バイパス手術のチーム責任者を務めた東京大学心臓外科教授。
・上村みどり 帝人ファーマ生物医学総合研究所上席研究員を経て、CBI研究機構量子構造生命科学研究所所長を務める。
本アワードでは、医療機器や医療機関向けのサービス、消費者向けのヘルスデバイスを手がける成長企業をメインに企業リストを作成。審査基準には「グローバルでの成長可能性/成長性」「医療的インパクト」「新規性」「日本での事業成長度」の4つを設けた。
そのなかでも今回、審査員らに「最近の医療スタートアップの成功例」と言わしめ、グランプリに輝いたのが「朝日サージカルロボティクス」だ。同社は、腹腔鏡手術支援ロボットANSUR(アンサー)を開発している。例えば、医師が臓器を持ち上げる仕草をすると、ロボットのアームがそれに従うように動く。ロボットが助手になるのだ。審査員を務めた小野は「『アンサー』は、少ない外科医でいかに質の高いロボット支援手術技術を維持するかという現場ニーズを見事に製品化したもの。先進国以外への進出が期待される」と評価した。
同社は、国立がん研究センター発のスタートアップとして始まった。同センター東病院、医療機器開発推進部門長の伊藤雅昭らが2015年にA-Tractionを創業し、その後21年に朝日インテックによって完全子会社化。現在の社名に変更された。23年2月には医療機器としての承認を取得し、同年11月には販売を開始した。
国内の医療企業のM&Aは、多くの場合、技術力を取り入れるというのが買い手の目的である一方、朝日インテックの一件は事業の成長を目的としたものだったと審査員の中尾はいう。
「米国の医療業界では、この30年から40年、スタートアップ企業の事業を大手企業が買って大きく伸ばすというのが産業構造になっています。自社でやっても時間がかかるし成功するかどうかもわからない。日本でも同様の流れが出てくるのは間違い無いし、その意味で朝日インテックの買収はエポックメーキングな事例でした」(中尾)



