インド、「英語話者は10人に1人」
このサイトでは他の国の英語話者についての記事も公開しているため、都市間の分布をまとめたインドに関する記事を確認してみると、都市間の差がそれほどなく、すべて同じB1レベルに留まっている日本とは違い、ばらつきのある分布となっている。ジャイプールは英語圏の大学入学基準(B2〜C1)を高いレベルで満たす基準となるC1、ムンバイ、バンガロール、ハイデラバード、コルカタなどではB2の熟練度となっている。一方で、同じ国といえどバラナシやアグラなどの都市ではA2と、日本のどの都市よりも低い。
日本人の間でのインド人の印象は、アクセントが強いけれども英語が流暢、といったものではないだろうか。実際、数でいうと、インドの英語話者の数はアメリカの次に多く、その数は約1億2900万人と、日本の総人口に匹敵する。
一方で、インドは14億人超の人口を抱えているため、パーセンテージにすると人口の約10%が英語を話すに過ぎない、ということになる。
また、インド社会の英語話者分布に関する特徴の一つとして、教育レベルと社会階層のどこに所属しているかによって、英語話者の数が明確に異なる傾向が見られるということがある。下の階層に属するインド人の3倍、上の階層に属するインド人は英語を話す、という。
ちなみに、このサイトでの英語力ランキングでは、インドはアジアでは9位、世界では60位と意外とそれほど高くないのだがが、もちろん日本のアジアで15位、世界で87位を大幅に上回っている。
インドと日本、二国の比較にとどまるが、人口の2%以下が英語が流暢である日本の状況をなるほど、とみるか、インドの10%弱を多い、とみるか。
インドの場合、英語の運用能力が社会階層と教育レベルと密接に結びついており、かつ高収入な仕事に就ける機会にも直結する一方で、日本では「英語が話せれば高ステータスの仕事を得る機会が極端に増す」わけではこれまでなかった。一昔前までは、英語ができる人はどちらかというと「英語屋さん」として、日系企業では出世街道からは外れることも少なくなかったくらいだ。このことも、英語を学ぶインセンティブに影響してきたように思われる。
一方でエンワールド・ジャパンの調査によると、ミドルキャリア層の年収においては、外資系企業勤務の場合、1000万円以上の割合が日系企業の2.6倍にあたるという。外資系企業と言っても実際は日本人の占める割合が多い企業も多く、外資勤務イコール即高い英語力(=上位2%の英語力)が求められるわけではない。だが、社内イントラが一部英語であるなど、業務上英語に触れる機会が(業種や職種にもよるが)増えることも想像に難くない。こうした状況をてこに、実際にビジネス場面で英語が使える人の数は、今後増えていくのだろうか。
高以良潤子◎ライター、ジャーナリスト、インストラクショナルデザイナー。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、インストラクショナルデザイナーを務めたのち、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系IT企業勤務。


