こうした不振にもかかわらず、LVMHは、ファッション・皮革製品、時計・宝飾品の各部門では「好調な業績」を上げたと強調した。「地政学的、経済的環境が混乱する中、LVMHは年初も緊張感を持ちつつ自信を維持している。当社は、革新と投資の持続的な方針、製品の品質と魅力、そして選択的な流通の絶え間ない追求によって、ブランドの開発に引き続き注力していく」。つまり、LVMHは販売不振を冷静に受け止め、長期的な視点で前進を続けていくということだ。
富裕層は高級品の購買を「休止」しているに過ぎない
高級品の市場調査を手がける米アフルエントコンシューマーリサーチのチャンドラー・マウントは、LVMHの戦略は正しいとみている。「短期的な軟調は長期的な衰退を意味するわけではない。(LVMHの)価格決定力、世界的な多様化、ブランド資産は依然として強力だ。今は後退ではなく、慎重に信頼を築くべき時だ。LVMHの収益が3%減少したのは、消費者が製品に飽きたり、不具合が生じたりしたことによるものではない。富裕層の消費者が『今ではない』と言っているだけだ」
マウントは、現在の市場動向に動揺しているLVMHをはじめとする高級ブランドは、関税などによる不確実性を伴う経済情勢によって、世界的に高級品業界全体で「心理的なリセット」が起きていることを認識すべきだと指摘する。「売上だけでなく消費者心理も注視する必要がある。富裕層は消えたわけではない。ただ、状況が明確になるのを待っているだけだ」
「先頭に立つためには、高級ブランドは動揺せず冷静に対処する必要がある。価格を見直し、高級感を強調し、プレッシャーの少ない親密性に重点を置きながら、ストーリー性を高めることだ。供給過剰や値引きに走ってはいけない。現在の販売不振は需要の低迷ではなく、心理的な休止に過ぎない」。その上で、マウントはこう結んだ。高級ブランドは「(消費者に)待っていた甲斐があったと思わせるようにしなければならない」