米国では多くの雇用主が学位要件を廃止し、実践的なスキルや経験を優先するようになっている。
TikTokのミリオネアやAIツールの登場を見ると、大学が高額で時代遅れに思えるのも無理はない。では、学位はまだ意味があるのか。答えは明快で、一部の学位には確かな価値があるが、そうでないものも存在する。
肝心なのは「市場価値」だ。4年(あるいはそれ以上)の時間と数万ドル(数百万円)の費用を投じるなら、単なる紙切れの学位証と住宅ローン並みの学生ローンしか残らない状況は避けたいところである。
4年制大学の価値が疑問視されるにつれ、世の中の認識も変わり始めている。ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)による2023年の調査によると、米国人のほぼ半数は、20年前に比べ高給を得る上では学位は重要ではなくなったと考えている。アップル、IBM、ヒルトンのような大手企業は多くの職種で学位要件を撤廃し、候補者を経験や実践的スキルに基づいて評価している。バーニンググラス研究所(Burning Glass Institute)の2022年の調査によれば、何百万件もの求人から学士号の要件が外されており、2020年の分析でも生産管理者のような職種で同様の傾向が確認されている。これらは、一般的な大学教育が今日の雇用主の求める具体的な能力を十分に提供できていないという認識の広がりを示している。
またBurning Glass Technologiesとthe Strada Instituteの調査(2018年)によると、大学卒業者の4割以上が学位を必要としない仕事に就いており、大学で習得した知識も生かされていない。そのうちの約67%は、卒業後5年たっても同様の状況にあるという。
専門家は、この傾向が今後も続くとみており、学士号以外の代替資格や認定、実践的なトレーニングが重要度を増すと予測している。2031年までには、ほとんどの仕事は何らかの形の高等教育を要求するものの、それは必ずしも学士号を意味するわけではなく、多くのキャリアにとって、もはやそれが最も賢明な道ではないかもしれない。