掘削技術、電力変換技術、バイオ触媒、電気化学還元。注目の気候テックスタートアップ
1. 革新的な掘削技術を持つGA Drilling
GA Drillingは2008年にスロバキアで設立され、世界規模の地熱エネルギー開発を推進するため、革新的な掘削技術を開発している。最初のプロダクト「Anchorbit」は、従来のロータリードリルと連携して動作するダウンホール・ウォーキングシステムで、掘削作業を安定させ、侵入速度(ROP)の向上とドリルビットの寿命延長を実現し、掘削コストを改善する。さらに、次世代技術として開発された「Plasmabit」は、パルスプラズマを利用することにより、硬質岩盤における熱的・機械的な岩破砕を促進し、より深く、効率的で低コストな掘削を可能にする。同社はパルスプラズマ技術の精度向上を目指し、さまざまな岩種に対して数千回の試験を重ねている。
2023年には、ヒューストンに拠点を置くグローバル石油・ガス掘削コントラクターNabors Industriesと協業し、「Anchorbit」技術を披露した。加えて、ブラジルのPetrobrasとのパートナーシップも発表しており、厳しい洋上環境での掘削作業におけるコスト削減とリスク低減が期待されている。
地中温度は1kmごとに約25~30℃ほど上昇する。従来の地熱発電所は数百メートルから3km程度の深さまで掘削し地熱資源を活用して発電するが、GA Drillingは10kmを超える深度での掘削を目指しており、ほとんどの場所であってもより高温の抽出が可能となる見込みだ。引き続き技術的・工学的課題はあるものの、このような極深掘削により、老朽化した石炭火力発電所の一部を活用できる可能性があり、期待を集めている。
2. 大変革期を迎えた電力を安定して供給する技術のSolid State Power
2020年に設立されたSolid State Power(SSP)は、ダラスに拠点を置き、パワーエレクトロニクスによる電力変換技術(Solid State Transformer、半導体変圧器)の拡大に取り組んでいる。変圧器は、電気の電圧を用途に応じて昇圧または降圧するための機器だ。
従来の変圧器は鉄心に巻数の異なる一次コイルと二次コイルを巻きつけ、電磁誘導の原理を利用して電圧と電流を変換する。同社はワイドバンドギャップ半導体、独自のトポロジーと電圧ブロッキング・キャパシタの組み合わせにより、電圧の安定化、力率の向上、効率化を図る多機能な配電変圧器「PowerHub」を開発し、特許を取得した。
世界中の電力グリッドは、再生可能エネルギー、EV、エネルギー貯蔵装置など分散型エネルギーリソースの導入にともない大きな変革期を迎えている。しかし、配電レベルでのリアルタイムなモニタリングや管理が不十分であることに加え、不安定な再エネ供給やEV・バッテリー充電需要の急増といった要因が、配電グリッドの電圧変動や不安定性の要因となっている。これまで各社が採用してきた、配電線の再架設や従来型電気機械設備の追加投入といった対策は、複雑でコストがかかる上、長期的な解決にならない。


