消費者心理の法則
従来、ラグジュアリー市場の中心顧客である富裕層や資産家の消費者は、物価上昇の影響を受けないと考えられてきた。だが、ダルピツィオは「高級ブランドを象徴する商品の価格が2年連続で高騰し、インフレが著しく進行した後では、わずか5%の値上げでも消費者心理に影響が出る」と忠告する。
ダルピツィオは続けて「関税による直接的な打撃以上に懸念されるのは、経済全体と消費者信頼感へのより広範な影響だ。超富裕層 (UHNWI) でさえ、株式市況を資産の判断基準とすることが多い。現状の不確実性は、関税そのものにとどまらない波及効果をもたらす」と警告した。
言い換えれば、高級ブランド品を購入するということは、単なる好き勝手な贅沢ではないのだ。それは個人のアイデンティティーや自己価値と結びつき、感情的・象徴的により深い意味を持つ。
「純資産額の高い個人から意欲的な購入者に至るまで、高級品を購入する決断は、決して単なる商取引では済まない。関税は物価を押し上げ、インフレはそれを加速させるが、贅沢品への支出にブレーキをかける最大の要因は経済ではない。それは心理だ」と、筆者が所属するアフルエント・コンシューマー・リサーチ・カンパニー(ACRC)の創設者兼CEOであるチャンドラー・マウントは言う。
ラグジュアリー市場は指標になる
高級品の需要は、しばしば景気後退に先立つ指標として機能する。ラグジュアリー市場の消費者は景気動向を最もよく把握しており、景気の悪化を予測して贅沢な出費を控える傾向がある。
ACRCが富裕層と純資産額の高い消費者を対象に行った縦断調査では、特に所得20万ドル(約2900万円)以上と本宅を除く資産100万ドル(約1億4000万円)以上の対象者の50%が、今後1年以内に景気後退が起こると予想していることが判明した。これは昨年半ばと比較して増加している。
この消費者マインドは、トランプの関税政策によって景気後退が引き起こされる「予見性が高い」と述べた米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOの見解とも一致する。


