フランスも標的に
仏紙ル・モンドによれば、フランスは2024年に約50億ドル(約7200億円)相当の高級品を米国に輸出した。世界最大のラグジュアリー企業であるLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは収益の約4分の1を米国で得ているが、米国内に生産拠点を構えることで関税の影響を部分的に免れている。さらにベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)はトランプ大統領と長年の友好関係にある。
一方、時価総額2位の高級ブランドであるエルメスは、売上の20%近くを北南米に依存している。アクセル・デュマ会長は、関税が適用されれば値上げに踏み切ると発表した。エルメスの価格はすでに高騰しており、ブランドを象徴するバーキンとケリーのバッグは1万ドル(約140万円)以上する。
英国には米市場が必要
1050億ドル(約15兆円)相当の産業規模を有する英国の高級品部門は、輸出頼みの面が強い。英ラグジュアリー業界団体ウォルポールによると英国産の高級品は約70%が輸出向けで、このうち22%が米国に輸出されている。
ウォルポールのヘレン・ブロックルバンクCEOは、第1次トランプ政権下でスコッチウイスキーに25%の関税が課された結果、業界全体で約8億ドル(約1140億円)相当の損失を被ったと指摘。次のように警告した。
「ラグジュアリー業界は以前にも世界的な貿易紛争に巻き込まれ、経済的に深刻な打撃を受けた。歴史を繰り返さないようにしなければならないが、貿易摩擦が猛スピードで激化しており、大西洋を挟んだ本格的な貿易戦争のリスクが迫っている」
顧客離れの兆候
外交レベルで関税をめぐる綱引きが繰り広げられる一方、高級ブランドと高級品市場の先行きのカギを握るのは結局のところ消費者である。コロナ禍後の高級品ブームが過ぎた市場は輝きを失っており、値上げとなれば状況はさらに悪化しかねない。
「関税騒ぎ以前の段階で、顧客の満足度と信頼を取り戻す必要があった」と、米コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーのシニアパートナーでファッション・ラグジュアリー部門グローバル責任者のクラウディア・ダルピツィオは指摘する。「昨年はネットプロモータースコア(NPS)が低下し、顧客ベースが5000万人減少するなど、顧客離れの兆候が若干ながら見られた」
失われた顧客は主としていわゆる「意欲的な消費者」だったが、関税と世界経済への影響をめぐる不確実性が渦巻く中、ラグジュアリー市場は今年、より多くの「真の顧客」を失うおそれがある。
消費者の熱意喪失は2024年の高級ブランド各社の業績にも表れている。ベインのレポートによると昨年のブランド業績は「非常に両極端」であり、成長を報告した高級ブランドは約3分の1と、前年の65%から劇的に減少した。


