日米の協力強化と復活に向けた課題
吉川:長年にわたり日米関係を最前線で見てきたラリーさんですが、現在の二国間の関係はどのような状況にあると考えていますか?
ラリー:日米同盟はかつてないほど強固になっています。かつては経済的な競合相手と見られていた日本が、今ではアメリカにとって不可欠なパートナーとなっています。特に中国への対応を見直す中で、その重要性が増しています。
とはいえ、不確実性は依然として残っています。トランプ政権による関税措置は、アメリカが80年にわたって支持してきた自由貿易の方針を覆すものであり、日米関係に新たな緊張をもたらすとともに、世界経済に大きな不確実性を生み出しました。日本政府がこの新たな課題に慎重に対処し、日米の重要な安全保障同盟と経済的パートナーシップを維持しつつ、トランプ政権に対して日米双方に悪影響を及ぼす誤った通商政策の撤回を働きかけていくことを信頼しています。
吉川:日本が国際的なプレゼンスを取り戻すには、何が必要だと思いますか?
ラリー:大きな課題は2つあります。人口減少と経済改革です。人口減少は時限爆弾のようなものです。また、労働生産性はOECD諸国の中でも低い水準にあります。この状況を打破するためには、次のような改革が必須だと考えています。
1.労働市場の改革:硬直した雇用制度や正規・非正規の格差が生産性を妨げています。労働の流動性を高め、公平な賃金を確保し、時代遅れの雇用構造を見直すことが重要です。
2.企業のリスクテイクの促進:リスク回避的な企業文化が今もなおイノベーションの妨げになっています。若手に裁量を与え、大胆な意思決定を評価するような風土への転換が求められます。
3.スタートアップとベンチャー投資の強化:日本の金融システムは依然として銀行中心で、スタートアップが資金調達しにくい状況です。リスクマネーの供給や資金アクセスの改善が、イノベーション促進の鍵となります。
4.教育改革:暗記中心の教育は、変化への対応力を制限しています。問題解決力や分析力を育む教育への転換が、将来の労働市場に備える上で必須です。
5.アジアにおけるリーダーシップの強化:アメリカが一部の国際的な責任から後退する中で、日本はアジアにおけるリーダーシップを強化するチャンスです。ASEAN諸国との経済連携強化、貿易政策への積極的な関与、中国との戦略的かつバランスの取れた関係維持がカギとなります。


