働き方

2025.04.21 14:15

有働由美子の新連載「いつまで働く?」 初回は「会社を辞めた理由」から

有働由美子

だって自分もそうやって良いポジションを与えてもらって成長してきたから。「いやだいやだ、私は退かない」は組織人としては言えないし、言いたくもない。

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とすると、退くしかない。退いて、譲って、苦手だけど管理職をする、ということになる。それはそれで面白いとも説得されたけど、現場を退くにはまだちょっと気力と体力が有り余っていました。

なので、組織にわがままを言わずに、その上で自分がやりたいことがやれる方法、と思ったら、「場を変える」しかなかったのです。だから、なんか私の場合は、会社を辞めるって、グズグズとした、ムズムズとした決断でした。

だって大学を卒業してすぐに入った会社が、ほとんどの時間を過ごす場所になっていて、そこ以外むしろ知らないし、なんならここが世界一の居場所とさえ思っているのに、そこから出て行くんだもん。

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CMみたいに、「そうだ今だ!」みたいな転職とは思えず、「やっぱり辞めるのやめよう、通用するはずない。自分を買いかぶってはいけない。ここにいるからこそやっていけてるだけで、よそに行ったらまったく評価もされないに違いない。わきまえよ」と、不安と迷いの嵐の中で悶々としていました。

「自分が失いつつあるもの」に気づいてしまった

ただ、そのときふと気づいたのです。辞めると考えだしてから、「自分の今」が見えた。それは、組織脳になっている自分でした。

どういうことかというと、若き日のまだ組織たるものがわかっていなかった時の、未熟だけど自分の拙い頭で考えようとする力、それを失ってしまっていることに気づいたのです。組織の中で、どう認められ、どう思われるかが第一になって、「自分が」どう思うのか、何をやりたいのか、を考えることを放棄していた。

自分が本当はどう思っているのか、もっといえば、私は自分の今を、一生を、どう過ごしたいのかについて、組織にいるからしょうがない、こうなるしかない、考えても仕方ないと、思っていたのです。でも、気づいてしまった。

組織にいたって、自由な発想で自分の思いで生き生きと働いている同僚もたくさんいました。でも私のような小心者は、ついついまわりを見て生きてしまう。判断をしてしまうのです。それはそれで楽しく幸せだったけど、気づいちゃったら、なんか一回試さないといかんと思ってしまったのです。私という人間は「自分の思考で行動できるのか」を。

組織を離れて7年。「やっぱり組織って良かったなあ」と思うこともたくさんあります。一方で、組織にいたら、私はこんなもんだという言い訳をして、できなかった体験もあります。

もう一度社会人人生をやり直すとしたら、組織を辞めずに、自分の意思と思考を保ち、最大限やりたいことをやれるように、あの手この手を会社内で駆使して、実現していくと思います。いい子ちゃんになりすぎず。

文=有働由美子

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