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2025.04.22 09:15

若年層が輸入牛を選ぶ理由 国産和牛神話が揺らいでいる

gettyimages/kyonntra

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国産黒毛和牛といえば、日本が世界に誇る高級食材だ。しかし、従来の“和牛神話”が今、静かに揺らいでいる。食肉業界に特化したコンサルティングを行うリライズコンサルティング株式会社の調査によって、その兆しが明らかとなった。

同社の食肉業界支援チームは、全国の20~60代の男女4000人を対象に「町の精肉店の利用状況」に関するアンケートを実施。その中から直近で精肉店を利用した800人を抽出し、和牛の認知や購買意識について調査を行った。

そもそも認知度が低い地方和牛

まず、Google年間検索ボリューム上位の銘柄和牛を対象に、認知度と実食経験を聞いたところ、松阪牛・神戸牛といった一部の銘柄を除き、地方和牛の認知率は低く、実際に食べた経験のある人はさらに少なかった。

この結果から見えるのは、国産和牛は「名前は知っていても食べたことがない」「そもそもブランドを知らない」という存在に留まっているということだ。「高級」「特別」といったイメージ先行のブランド戦略は、多くの生活者にとっては距離感のあるままうまく機能していないのではないか。

輸入牛・赤身が人気傾向に

さらに注目すべきは、「仮に同じ価格であった場合、和牛と輸入牛のどちらを選ぶか」という設問に対する回答だ。20代では「輸入牛を選ぶ」と答えた人の割合が過半数になり、その理由は「赤身中心でヘルシーだから」「脂が重くないから」というものが多かった。

また、年代別に食生活に置いて意識しているポイントについての問いには「高たんぱく」な食事をとることを心がけている人は、全世帯でバランスよく分布していた。続いて「低脂肪」を意識している人たちが多いことを見ると、健康志向の観点から見ても「肉=霜降り」より「肉=赤身」を選ぶ傾向にあるようだ。


背景には、健康志向や体質への配慮といった価値観の変化がある。脂の旨味を重視した従来の黒毛和牛に対し、「赤身の旨味」や「食べやすさ」を基準に選ぶ層が拡大している。また高価格帯=高品質という一方向的な構図は、今の若年層には通用しにくいようにも思う。むしろ「納得できる理由」がなければ選ばれない時代に入っているのではないか。

今回の調査結果は、こうした消費者意識の転換をあらわにした。「ブランド和牛だから売れる」という構図はもしかしたら限界を迎えつつあるのかも知れない。

プレスリリース

文=福島はるみ

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