サイエンス

2025.04.17 18:00

15万匹が集まる「野生のヘビ世界最大の集会」が極寒の地カナダで毎年開かれるワケ

Cindy Creighton / Shutterstock.com

この求愛騒動は、大半がフェロモンによるものだ。専門誌『Chemical Senses』で2006年4月に発表された研究によると、メスが放出する強力な化学物質を、オスは口の中にある特別な器官(ヤコブソン器官)で感知する。こうして、オスたちはメスのほうに引き寄せられる。

advertisement

条件が整うと、オスはメスの背骨沿いに顎をこすりつけ、リズミカルに全身を収縮させて協力させようとする。成功すると、オスは左右に1本ずつある半陰茎(ヘミペニス)をメスの総排出腔に入れ、精液を出してから、他の求愛者の交尾を一時的に防ぐゼリー状の栓をする

年数万匹が車に轢かれ、絶滅の危機に瀕したことも

ナルシス・スネーク・デンズは現在、世界最大のヘビたちの社交会場になっている。しかし、継続的な保護の取り組みや切望されたトンネルが作られていなかったら、現在のような状況にはなっていたかったかもしれない。

マニトバの田舎にある幹線道路(17号線)には、ずっと以前から悲しむべき季節の風物詩があった。タイヤからベチベチと鈍い音がする。大量のヘビが、車に轢かれて押しつぶされるのだ。

advertisement

アカハラガーターヘビは毎年春と秋に、冬を過ごす穴と、夏を過ごす湿地とのあいだを移動する。その際、2車線の幹線道路を横断しようとして大量に死んでしまうのだ。1990年代後半には、冬眠の穴に移動するさなかに、3万匹も死んでいた

そんななか、1999年の冬が到来した。インターレイク地区を容赦ない寒波が襲い、数万匹が暖かい地下のねぐらにたどり着く前に、地面が冷えきってしまった。あるものは落ち葉の下で丸くなり、あるものは開けた土地で動けなくなり、凍え死んだ。生き延びられる場所まで、あとほんのわずかだった。この年に、アカハラガーターヘビの個体数は激減した。

この轢死と寒波のダブルパンチを受け、マニトバ州は世界最大の爬虫類の集会、地球上のほかのどこにもない生態現象が危機に瀕していることを認識した。

自然保護活動家たちは、工学で対応した。幹線道路には防雪柵を作ってヘビが入れないようにし、幹線道路の下に直径15cmのトンネルを張り巡らせて、ヘビをそちらに向かわせるようにしたのだ。トンネルの壁には、研究者が人工フェロモンを塗って誘導した。すると、ヘビが死ぬ数は少しずつ減り、年に1000匹ほどにまで減少した。

数十年におよぶ草の根の努力と化学によるちょっとした妙技のおかげで、ナルシス・スネーク・デンズは現在、完全に回復している。毎年春には、以前のように赤い斑点の一団が押し寄せる。その光景に観光客たちは歓声を上げ、ヘビたちの絶滅を阻止した人たちは静かに満足している。

forbes.com 原文

翻訳=緒方亮/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事