予算2億円の宇宙プロジェクト
月での酒造りへの第一歩として、まずは月の環境で清酒が醸造可能なのか確認する必要がある。そこでISSの有償利用制度を利用し、宇宙で醸造試験をすることにした。過去には本制度を利用して、焼酎酵母が宇宙を旅した事例はあるが、実際に宇宙空間でお酒を発酵させた成功例はない。
ISS専用の醸造装置は、各社の協力を得て開発。装置は山田錦、麹、酵母をセットした状態で打ち上げられ、宇宙飛行士が水を投入するだけで発酵が始まる仕組みだ。装置内では月と同じ1/6Gを造り出し、発酵が始まれば、装置付属の小型コンピュータから地球に遠隔で情報を飛ばし、地上で発酵条件を確認する。アルコールの生成は、発生した二酸化炭素量から判断する。打ち上げにかかるコストは、当初の予算からかさんで予想約2億円弱だという。
醸造装置を搭載したロケットは、2025年内に打ち上げ予定だ。打ち上げられる予定のグラス2杯分のうち1杯分はすでに予約売却済み、残りは分析に回し、今後月で酒造りをするための糧となる。
「将来月に行くことを、密かによこしまな夢として持っています。月に酒蔵ができれば、オーナーとして視察に月に行かざるをえませんから」と笑いながら、目を輝かせる桜井氏。そう遠くない未来に、月で酒を飲む、そんな夢のような話が現実に迫っている。
「山口の山奥の小さな酒蔵」から世界、そして宇宙へ
2023年9月には米国ニューヨーク州に酒蔵「DASSAI BLUE Sake Brewery」を建設し、2024年11月には仏三つ星シェフのヤニック・アレノ氏と共同でパリに「ル・イザカヤ・ダッサイ」をオープンするなど、獺祭の勢いには驚かされるばかりだ。海外イベントのスポンサーにも積極的で、先日も、米アカデミー賞パーティーで「獺祭BLUE Type23」が提供され、初の日本酒提供の快挙として話題になった。
さらに食のアカデミー賞といわれる「ベストレストラン50」世界版・アジア版においては2021年から日本唯一の公式スポンサーを務めている。世界中のトップ・シェフやフーディー、インフルエンサー等が集うセレモニーでは、鏡開きのパフォーマンスでパーティーに華を添えてきた。


