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2025.04.17 17:00

失恋から立ち直るのに「平均8年」の衝撃 なぜ私たちは長い間別れに苦しむのか?

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問題は、これらの段階がきれいに直線的に展開することは滅多にないということだ。別れから完全に立ち直ったと思っても、昔の写真を目にしたり、親しんだ香りをかいだりしただけで、また悲しみに暮れることもある。望んだ時期に心の整理がつくとは限らない。多くの人にとって、満足のいくきれいな形で心の整理がつくということもない。

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そして、受容の段階に達したとしても、相手へのかすかな想いが完全に消えることはない。相手は自分のことを考えているだろうか、別れを後悔しているだろうか、自分という存在がまだ相手の記憶の中に生き続けているだろうか、などと気にしている自分に気づくかもしれない。

もちろん、こうした想いは相手と寄りを戻したいという意味ではない。おそらく、かつてあなたが深く感情を傾けたことの余韻にすぎない。感情の切り離しには継続的な感情処理が必要で、そうした感情は何年も意識のなかでちらつき続ける可能性がある。これが、多くの人が元恋人のことを完全に吹っ切るために数カ月をかけるだけでは済まない理由だろう。それはほぼ10年間にわたって続く、ゆっくりとした心の整理なのだ。

3. アイデンティティの融合

長く続く恋愛関係でよく見られる現象のひとつに、心理学者が「エンメッシュメント」と呼ぶものがあるが、これは必ずしもポジティブな結果をもたらすものではない。2022年の研究によると、これは相手と自分のアイデンティティと一体感の境界があまりにも曖昧になり、それぞれが徐々に自己と自主性を失っていく関係を指す。

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つまり、「私とあなた」が徐々に、だが確実に「私たち」になっていく。ふたりが別々の人間だという感覚ではなく、ふたりでひとつの相互依存のアイデンティティを持つようになる。

こうなると個々のニーズよりも、ふたりのニーズをより重視するようになる。個人の考えや感情、願望は二の次となり、意見や目標、感情の面でふたりはお互いの一部になる。この結合された調和のようなものを維持するために、自分の感情を抑えたり、自己主張を避けたりすることさえある。

当然のことながら、このような状態にあるふたりが別れる場合、関係の解消は完全な自己喪失のように感じられる。

共有していたアイデンティティがなければ、長年、あるいはおそらくこれまで一度も考えたことのなかった質問に突然向き合うことになる。その質問とは「この関係がなければ、私は誰なのか。『私たち』という考えを持たない今、私は何をしたいのか」というものだ。 あなたの心のコンパスは完全に混乱する。

人によっては、恋愛関係という基準がなければ日々の決断さえ難しくなる。そして、自分のアイデンティティの再構築、つまり独立した自分自身の価値観に根ざしたアイデンティティの再構築は、たとえエンメッシュメントの度合いが深くなかった、あるいはそうした関係が長くなかった場合でもすぐにできることではない。

そして、不幸にもごく一部の人にとっては、他の人とデートしたり、新しい恋愛関係を築いたりしても、アイデンティティの混乱は微妙な形で続く。自分でも気づかないうちに、前の恋愛関係のパターンに基づいて状況に対応しているかもしれない。あるいは、自分自身の一部が置き去りにされたような感覚に陥り、置き去りになっているものをどのように取り戻せばよいのかわからないこともあるかもしれない。

元恋人とつながった状態でなくなり、自信に満ちた明確な自己感覚を取り戻すまでの長い道のりには、何年もかかることがある。ある意味でそれはほぼ、人生の目的やアイデンティティを見失う実存的危機の状態であり、元恋人に出会う前の自分を探し出すことを余儀なくされる。

そして、自分を再び取り戻すことは決して瞬時にできるものではなく、ゆっくりと展開する。元恋人を愛していた頃とは違う、昔の自分はどうだったかを思い出す新たな機会が追い追いめぐってくる。こうした意味で「恋人」を「元恋人」へ、そして「昔の知り合い」へと移行するために何年もかかることは、もっともな話だと言える。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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