暮らし

2025.04.17 17:00

失恋から立ち直るのに「平均8年」の衝撃 なぜ私たちは長い間別れに苦しむのか?

Shutterstock.com

恋人と別れると、相手の声を聞いたり、画面に表示された相手の名前を見たり、あるいは共有するルーティーンに没頭したりしたときなど、かつては毎日放出されていたドーパミンがなくなってしまう。だからこそ、たとえ別れが最善の選択だったと分かっていても脳は抵抗する。脳は主な報酬源を失ってなお、報酬系(喜びや欲求を司る脳の神経回路システム)を維持しようとする。

advertisement

そして、あらゆる中毒パターンにも言えることだが、それを解消するプロセスには時間がかかる。ほとんどの人が予想するよりはるかに長い時間がかかる。たとえ何年も経って元恋人を積極的に恋しく思うことがなくても、その古い絆に依然として未練を感じる可能性がある。特定の歌や香りが過去のとある瞬間を思い出させるように、元恋人のことを思い出すと、愛とルーティーンによって深く刻み込まれた神経回路が呼び起こされる。

こうした神経回路は数カ月あるいは数年をかけて形成されるため、破局から数週間で簡単に消えるものではないことは理解できる。精神面や感情面で形成されていた「インフラ」を脳が完全に解体するには、時には何年もの時間を要する。

2. 一筋縄ではいかない悲しみの処理

友好的な別れであっても、数え切れないほどのわだかまりを抱えることになる。決着をつけたいという強い願望、大きな怒り、そして深い落ち込みなどだ。別れを悲しみに例えたことがあるなら、その表現は100%正しい。実際、専門誌『アダルトスパン・ジャーナル』に2020年に掲載された研究では、別れに限らず、人生における苦痛を伴う重大な出来事は、悲しみを引き起こす可能性があると指摘している。

advertisement

多くの点で、別れた後に経験する喪失感は精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが発表した悲しみの5段階モデルに通じる。

1. 否認:突然の別れが現実であることを、信じようとしない。この段階では「こんなことが起こるはずがない」とか「まさか、あの人が私にこんな仕打ちをするはずがない」という言葉がよく聞かれる。

2. 怒り:痛みは非難へと変化する。自分に対する相手の振る舞い、相手があまりに早く次の恋人を見つけたこと、あるいはタイミングがあんまりだったことなどについて怒りが爆発する。この怒りはある種のコントロール感をもたらすが、傷を癒やすことはない。

3. 取引: 別れずにすむためにどんな言動が取れたのかを想像しながら、会話や状況を何度も思い返す。もし自分がもっと注意深くうまく振る舞っていたら、そんなに不安に感じていなかったら、という絶望的な「〜でさえあれば」の段階だ。

4. 抑うつ:現実の重みがのしかかる段階だ。 引きこもって考え込み、相手と一緒に楽しんでいたことにも興味を失っていく。喪失感が重くのしかかり、絶望感が忍び寄ってくる。

5. 受容:最終的に関係の終わりを受け入れ始める。悲しみはまだ感じるかもしれないが、その痛みは徐々に和らいでいく。相手と一緒に歩まない未来が見え始め、そして、それを歓迎さえするようになるかもしれない。

次ページ > なぜ悲しみの処理は一筋縄で行かないか

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事