その段階に到達するまでには相応のプロセスを経ることも必要なのだと、ペイ氏は説明を付け加えている。
「とはいえ、ユーザーがInstagramやLINEといった個個のアプリによる体験を必要としていることも承知しています。昨今『アプリのない端末』という次世代のスマートデバイスの構想を多くの企業が描いていますが、私は一足飛びにOSから個別のアプリをなくすべきとは考えていません。そこに至るには段階的なプロセスを経る必要があり、Nothingは生成AIとパーソナライズされたOSの体験が、これからユーザーにもたらす新しい価値を丁寧に伝えたいと考えています。Essential Spaceはそのための大きな一歩でもあるのです」
スマートフォンが現状「最良のAIデバイス」である理由
ペイ氏にAI時代のスマートデバイスがあるべきかたちを聞いた。ペイ氏は「現在のスマートフォンはAIデバイスとしても最高のフォームファクターの1つであり、今後しばらくはこれを超える新しいスマートデバイスが現れない」と断言する。さらに、スマートフォンはすでに世界中で多くのユーザーが利用している、非常に高い普及率を誇るデバイスでもあるからだと、ペイ氏は説明を続ける。
「毎年世界で約12億台のスマートフォンが販売されています。一方で、例えばヘッドセットタイプのスマートグラスは、いま最も人気のあるモデルでもわずカ年間100万台の売上と言われています。いまだ普及率がその程度のデバイスの上に、これからエコシステムを構築することはとても困難です。普及率の幅広さだけでなく、日常使う『電話』であり、メールやSNS、ゲームなどあらゆる用途に使えるスマートフォンと私たちの関係性の『深さ』においても理想的なAIデバイスです。Nothingは生成AIなどの技術を引き続き探求しながら、いま最も広く普及するスマートフォンのカテゴリーで価値ある体験をユーザーに届けることに注力します」
スマートフォンの特徴を活かしながら、その上に「真のインテリジェントなオペレーティングシステム」を築くことができるとペイ氏は語る。スマートフォンのAIツールを音声により操作するためのデバイスとして、ワイヤレスイヤホンの開発にも力を注ぐ。スマートグラスのようなデバイスがこれから予想もしない革新をもたらすことについて、ペイ氏は否定的な立場を示しているわけではない。ただ、現時点でNothingとしてスマートグラスなどの新しいスマートデバイスの領域に進出する考えはないとペイ氏は明言している。スマートグラスなど他社が開発したデバイスがNothingのデバイス、OSとインテリジェントにつながるようにプラットフォームを整えることには今後も全力を尽くすという。身の丈の成長を着実に遂げながら、中長期的により大きな目標を達成することが大事なのだとペイ氏は繰り返し述べた。


