北米

2025.04.15 09:30

米国のTikTokで広がる「簡単に稼げる副業」、その背後にある歪なインセンティブ

Shutterstock.com

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TikTokで400万回以上再生されている動画の中で、40代の専業主婦であるジリアン・ランドールは、「まったくの初心者」が月に5000〜1万ドル(約71万2000〜142万円)を楽に稼げる副業の始め方を紹介している。彼女によると、必要なのはアマゾンのアフィリエイトのアカウントを作ることのみだ。そして、特定の商品のリンクをSNSに投稿して、そこから誰かがその商品を購入すれば、アマゾンから報酬が支払われる(米国のアマゾンは家具のアフィリエイト購入に3%の報酬を支払っている)。

しかし彼女は、その動画の中で自分はこの方法でうまくいかなかったことは明かしていない。動画は、2023年8月に彼女が投稿した最初のものの1つだが、意味のある収入が得られなかったため、ピンタレストを通じたアマゾンのアフィリエイトは1カ月ほどでやめてしまったという。

ランドールはその後、約5万8000人いる自身のフォロワーにデジタルマーケティングの始め方を教える方が、はるかに収益性が高いことに気づいたという。彼女によれば、その成功の秘訣は「Digital Wealth Academy」と呼ばれるオンライン講座で学べるという。この講座は、「寝ている間に商品を売る」オンラインビジネスの構築方法を教えるもので、彼女はこの講座を1件あたり497ドル(約7万700 円)で販売することで、月に1万7000ドル(約242万円)以上を稼いでいると昨年のフォーブスの取材で語っていた。

「楽に稼げる方法」を他人に売る

ランドールは、TikTokやインスタグラムで増加中の、「簡単な副業で収入を増やしたい」と考えている人々にマーケティング講座を販売するクリエイターの一員だ。生活費の高騰により、多くの米国人が追加の収入を必要とする中で、副業を意味する「#SideHustle」というハッシュタグを付けた投稿の件数は、インスタグラムで約690万件、TikTokで約410万件にのぼっている。

アマゾンのアフィリエイトで稼ぐことも可能だが、多くのクリエイターは、自分の成功の秘訣を他人に伝授する方がはるかに楽に稼げることに気づいたようだ。

これらの人々の多くは「Digital Wealth Academy」や「The Roadmap Exclusive」「Legendary Marketer」という名称の人気講座を販売している。これら3つはいずれも、ニッチな市場の見つけ方やエンゲージメントの高め方などのオンラインビジネスの基礎を教えるとうたっている。Digital Wealth Academyのウェブサイトには、「不労所得は裏技」と書かれたバナーがあり、「理想のビジネスの構築」を支援すると述べている。この講座の創設者はフォーブスのコメント要請に応じなかった。

歪なインセンティブ

しかし、ここには歪なインセンティブが存在している。これらの会社の中には、インフルエンサーが講座を販売するたびに、売上の最大85%を報酬として与えるものもあり、さらに「マスターリセール権」と呼ばれる仕組みを通じて、講座を販売した際の利益の100%をクリエイターが得られるようにしているところもある。その結果、多くのクリエイターが、副業でお金を稼ぐのが「いかに簡単か」を誇張して伝えるようになっていることが判明した。 #SideHustleのタグがついた投稿には、「バカみたいに簡単」で「自宅のソファに座ったままで月に何千ドルも稼げる」といったうたい文句が並んでいる。

次ページ > 「簡単にお金を稼げるという話は、実際は中身がなくても魅力的に聞こえるものだ」

編集=上田裕資

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