カルチャー

2025.05.07 15:15

デジタルノマドの過半数がジェネレーションZとミレニアル世代、「スロマド」も台頭

Getty Images

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関西大学社会学部 松下慶太教授はメディア論、ソーシャル・デザインが専門で、働き方、食、観光などのフィールドに詳しく、メディア、テクノロジーによる「場所」や「経験」の変容をテーマとする話題の研究者だ。

ここでは、日本デジタルノマド協会顧問、日本ワーケーション協会フェロー、鳥取県県政アドバイザーも務める氏に、オフィス回帰の今、「デジタルノマド」の現況について以下ご寄稿いただいた。


デジタルノマドの79%が「自分の仕事に非常に満足」、全ワーカーの64%を上回る

コロナ・パンデミックをきっかけにリモートワークが広がる中で、場所を移動しながらや複数拠点でモバイルメディアやオンラインを活用して働くというスタイルが広がった。こうしたワークスタイルを実践するデジタルノマド(「ノマド」は英語で「遊牧民」「放浪者」の意)に注目が集まっている。

彼ら彼女らはコロナ・パンデミックによって初めて出てきたのではなく、2010年代から徐々にそのコミュニティをつくってきた。デジタルノマドの実態を定量的に掴むことは難しいが、そのなかで多くの論文や資料がデータとして依拠しているのがMBO(https://www.mbopartners.com/state-of-independence/digital-nomads/)の調査だ。

2024年度版によると、2024年の時点で米国のワーカーの約11%に相当する1810万人が自らをデジタルノマドと認識しており、これは2019年と比較すると2.5倍になっている。

内訳を見ると、企業などで就業する従来型デジタルノマドは5%減少した一方で、個人事業などで仕事を請け負う独立型デジタルノマドは20%増加している。

https://www.mbopartners.com/state-of-independence/digital-nomads/ を元に編集部で作成
https://www.mbopartners.com/state-of-independence/digital-nomads/ を元に編集部で作成

2019年に従来型(320万人)に対し独立型(410万人)だったのが、コロナ・パンデミックによりリモートワークがより広がった2020年には、従来型(630万人)に対し独立型(460万人)と逆転した。その後も従来型は増加していったものの、コロナ・パンデミック後のオフィス勤務への回帰の影響もあり2022年から減少に転じている。

一方で独立型デジタルノマドは2019年以降減少していない。このことは独立型デジタルノマドの活動が引き続き拡大していること、およびオフィス勤務回帰に対して退職や独立の影響もあると言えるだろう。 ワークスタイルについてデジタルノマドの79%が自分の仕事に非常に満足しており、全ワーカーの64%を上回っている。

年齢層別では、ジェネレーションZ(26%)とミレニアル世代(38%)がデジタルノマドの過半数を占めている。一方で、55歳以上の層も全体の14%を占めており、そういった意味でデジタルノマドは幅広い年齢層にわたっていることがわかる。

https://www.mbopartners.com/state-of-independence/digital-nomads/ を元に編集部で作成
https://www.mbopartners.com/state-of-independence/digital-nomads/ を元に編集部で作成

デジタルノマドの79%が仕事でAIを使用しており、そのうち76%が高度(35%)または中級(51%)のAIスキルを持っていると自己評価しているなど比較的高スキルを活かした職業、業務を行っていることが示されている。

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文=松下慶太 編集=石井節子

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