カルチャー

2025.05.07 15:15

デジタルノマドの過半数がジェネレーションZとミレニアル世代、「スロマド」も台頭

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一時的なイベントではなく長期的な滞在を目指して

観光が盛り上がる日本でもオーバーツーリズムなど課題が出てきている。そのなかで観光地だけではなくそうではない地域にも関心を持ち、(地元の雇用を奪わず)自分で仕事を持ちながら長期滞在を志向するデジタルノマドは観光にとっても、そして地方創生にとっても有力なアプローチとなりうるだろう。とりわけサステナブルなツーリズム、関係人口など地方創生に対してこれまでのワーケーションの流れと合流しながら展開していくだろう。

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2024年に韓国、日本がまた2025年には台湾でデジタルノマド・ビザがスタートした。これまでタイのチェンマイやインドネシア・バリ島など東南アジアがデジタルノマドを惹きつける拠点であったがこれからはそれに加えて東アジアも注目されていくだろう。

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観光庁は2024年にデジタルノマド誘客の事業をスタートさせた。ここでは石川県・金沢市、和歌山県・白浜町、宮崎県・日向市、福岡県・福岡市、大分県・別府市、長崎県・長崎市 /五島市、沖縄県・名護市/那覇市/北部やんばるなどワーケーションにも積極的に取り組んでいるエリアが採択された。

2025年度も引き続き「令和7年度 質の高い消費と投資を呼び込むためのデジタルノマド誘客促進事業」を公募している。ここで注目すべきは「通年を通してのデジタルノマド誘客向けて、イベント等で集中的に誘致する期間(コア期間)に求められる取組」と「継続的なデジタルノマド受入に向けて通年を通して誘致する期間(通年期間)に求められる取組」を区別した上で、その両方を行なうモデル実証を実施する点である。つまり、デジタルノマド誘致において、一時的なイベントだけに頼るのではなく、それをきっかけとして通年的に滞在してもらうことがポイントとなる。

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留意したいのはそうしたデジタルノマドを少子高齢化や産業の空洞化に悩む地域にとっての「便利な存在」としないことだ。デジタルノマドは数日を過ごす旅行者でもなく、移住者でもない。いわば地域にとって第3の存在とも言える層である。彼ら彼女らを地域のコミュニティやビジネスに埋め込むのと同時に流動的であることの意義をうまく活かす地域が、デジタルノマドにとっても魅力ある地域になるだろう。


松下慶太(まつした・けいた)◎1977年、神戸市生まれ。関西大学社会学部教授。博士(文学)。京都大学文学研究科、フィンランド・タンペレ大学ハイパーメディア研究所研究員、ベルリン工科大学訪問研究員、実践女子大学人間社会学部准教授などを経て現職。専門はメディア論、若者論、ソーシャル・デザイン。著書に、『ワークスタイル・アフターコロナ 「働きたいように働ける」社会へ』(イースト・プレス刊)、『モバイルメディア時代の働き方』(勁草書房刊)、『デジタル・ネイティブとソーシャルメディア』、(Kindle版、教育評論社刊)など。詳細は個人webサイト(https://www.matsushita-lab.com/)で。

文=松下慶太 編集=石井節子

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