「ジオ・アービトレイジ」と「スロマド」
前述のMBOの調査によると、デジタルノマドの10人に4人(40%)が来年は米国内で過ごす時間を増やし、海外で過ごす時間を減らす予定だと答えている。より多くの時間を海外で過ごす予定だと答えたのは17%にとどまった。実際、デジタル・ノマドの51%は2023年と同様に米国内のみの旅行を計画しているが、2022年の42%からは増加している。2024年、平均的なデジタル・ノマドは6.6カ所を訪れ(2023年は7.2カ所)、1カ所に平均5.7週間滞在し、2023年の5.4週間から増加した。
この調査結果にあるようにデジタル・ノマドは訪問する場所は少なくなっているが、各滞在地での滞在時間は長くなっている。またコロナ・パンデミック以降、旅行や旅においてサステナブルやより深い地域理解を重視する人も増えており、「スロートラベル」も指摘されるようになった。
そもそも所得の高い国の仕事を請け負ったり雇用されたりすることで高い収入と低コストの地域での生活を組み合わせる「ジオ・アービトレイジ(Geo-Arbitrage)」は、海外デジタルノマドの基本戦略である。
実際、収入に関して、デジタルノマドの17%が年間世帯収入25000ドル未満だが、46%は75000ドル以上と回答している。そして41%が非常に満足、38%が満足と答えており、全体の79%が収入に満足している。
これまでよりもより長く滞在するデジタルノマドは特に「スロマド(Slowmad/Slomad)」と呼ばれる。このようなスタイルの滞在は地域の伝統や文化についてより多く体験し、理解したり、住民とより深く交流したりすることを可能にするだけでなく、コミュニティの形成、移動のストレス軽減、仕事の生産性向上にも有効であろう。
例えば、バリ島の街、チャングーはサーフィンが盛んで仕事とサーフィンを両立したいデジタルノマドが多く長期滞在しているが、近年は人が増えすぎてしまい混雑している。
同様にサーフィンが盛んであるがまだデジタルノマドの認知度が高くない宮崎県日向市はそこに目を向け、デジタルノマド誘致を進めている。また地理的な近さから韓国や台湾との連携も積極的に進めている。


