伝統芸能とAI——過去と未来の融合
窪田氏に今後の展望を伺ったところ、ビジネス、アートの延長上に、伝統芸能の継承にも強い関心を持っていると答える。彼がこれまで語ってきたAI社会へのアプローチとは別軸の取り組みとなるが、未来の創造において欠かせない視点だと考えていると述べる。
窪田:「現在、東京藝術大学大学院に通っています。そこで雅楽を学んでいる友人と話をするうちに、歴史を見据える方向性の違いに気づきました。雅楽は1400年の歴史を継承する立場。対して、アーティストは自分の作品を未来に残そうとする立場。背中合わせの関係だけれど、継承と創造は違う形で歴史を担おうとしてどちらももがいている」
この気づきから、彼は伝統工芸や伝統芸能とAIの関係性について模索し始めた。現在、社会課題解決をテーマにしたスタートアッププログラム、IBM BlueHubプログラム in Kyotoに採択され、プロジェクトを通じて京都市の伝統産業ミュージアムと協働し、伝統を未来に継承するための可能性を探っている。
窪田:「伝統工芸の世界を知ることで、今までのビジネスやアートの考え方とはまったく異なる、新しい視点が必要だと感じています。この分野での出会いがどのような結果をもたらすのか、いずれまたお伝えできればと思っています」
AIが変革をもたらす世界の中で、見過ごされがちな『0次データ』に光を当てること。そして、テクノロジーと伝統が交わる地点で、新たな未来を築くこと——窪田氏の語る『How』『What』から『Why』への視点の転換は、私たち一人ひとりが未来を構想するための羅針盤となる。さあ、私はどのような問いをもとに未来に進んでいこうか、自らを問い直すきっかけともなる取材であった。


