実際、次のようなことがあった。23年、ホワイトはビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブの主力製品「バドライト」と、6年間で1億ドル以上と報じられるスポンサー契約を締結した。バドライトは、自社製品の広告にトランスジェンダーのインフルエンサーを起用したことが原因で炎上し、保守派からボイコットされていた。
だがホワイトはバドライトを擁護し、ホワイトからの嘆願を受けてトランプ大統領も「バドライトにもう一度チャンスを与えるべきだ」と、“援護射撃”した。大衆迎合的な資本主義では、イデオロギーよりも忠誠心が優先されるのである。
インフルエンサーたちの“ゴッドファーザー”
00年代にリアリティ番組を利用して視聴者層にリーチしたのと同様に、ホワイトは、影響力のあるインターネット・クリエイターとの関係づくりに力を入れている。イベントの最前列の席を与え、コンテンツを好きにつくれるようにしているのだ。
「こうした若い連中に何かをしてもらいたいなら、ふつうは莫ばく大だいな金を支払わなければならない。でも彼らは私のためにただで働いてくれ、自腹を切って試合を観戦しに来る」とホワイトは言う。
「私はインフルエンサーたちから“ゴッドファーザー”のように思われていますよ」
ホワイトの次の標的はボクシングだ。2世代前には米国のスポーツの頂点にあったが、現在は彼のUFCと競うのに苦労している。ホワイトが行うほぼすべてのことに、昨年の暗殺未遂でトランプが発した「戦え!」という咆吼を連想せずにはいられない。
「私の哲学では、人間のDNAには『戦い』が刻まれているということだ」と彼は語る。
「肌の色、出身国、話す言語に関係なく、私たちは戦いが好きなんですよ」
デイナ・ホワイト◎総合格闘技(MMW)の世界的団体「UFC(ジ・アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ )」のCEO。米ラスベガス周辺でボクシングジムを経営していたホワイトは、高校時代の同級生でビリオネアのロレンゾとフランクのフェルティータ兄弟に破綻寸前だったUFCへの出資をもちかけ、2001年1月、10%の株式と引き換えにCEOに就任した。


