万博で注目の「リユース建築」 2つのパビリオンに見る永山祐子の挑戦

建築家・永山祐子氏が手がけた「Women’s Pavilion in collaboration with Cartier」

「Women’s Pavilion in collaboration with Cartier」
「Women’s Pavilion in collaboration with Cartier」

日中は自然光が美しい陰影を生み、夜にはライティングが幻想的な雰囲気を作り出す。都会の喧騒から少し離れた静かな空間が生まれ、訪れる人々が自然と交流しやすい環境が整えられている。ボールジョイントシステムを採用した組子ファサードはパーツが約1万点にも及ぶ。パイプの肉厚まで考慮して構造解析を繰り返しながら、適材適所に配置し最適な形に組み替えた。

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この資材をリユースするために大林組と、中東で石油プラントのメンテナンス、物流事業を展開する山九に協力を依頼。「実はドバイ万博の資材を日本へ持ち帰る段階で運搬や管理の課題が山積していた。だから、山九の中村社長があっさりと引き受けてくださったのが夢のようだった」と永山氏は振り返る。

解体した資材はすべてQRコードで管理され、コンテナ1個半分に収めて運搬。大阪港の倉庫で保管され、今回の万博で改めて日の目をみた。「同じパーツを使用した新たなリユース建築が2年後にも計画されていて、すでに設計に着手している」という。

永山氏はドバイ万博の設計者公募時から、リユース建築だけでなく、語らいの場も構想し、その想いが今回実現した。2階の「WAスペース」と名付けられた空間がそれ。万博会期中にはここでさまざまなレクチャーやディスカッションが開催され、多様な視点から女性の社会進出について議論が展開される予定だ。

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「Women’s Pavilion in collaboration with Cartier」2階の「WAスペース」
「Women’s Pavilion in collaboration with Cartier」2階の「WAスペース」

永山氏も仕事と家事と子育ての両立に奮闘する女性のひとり。日本には女性が活躍しにくい状況がまだあると実感している。「女性の活躍自体がこれからの日本経済を立て直していくと思う。それをサポートする社会であってほしい。ここはそのための出会いや対話を生む場になれば」と期待を込める。

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文・写真=橋長初代

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