経営・戦略

2025.04.22 13:30

言語化「できない」vs.「する」イノベーションを起こすのはどっち?

瀬戸欣哉(LIXIL CEO)・本郷和人(東京大学史料編纂所教授)

瀬戸:それはダイバーシティの実現だけやってもダメで、必ずインクルージョンをセットにしなければ意味がないという例かもしれません。現代でいえば女性管理職の数だけ増やしてバランスをとったところで、登用の意味をきちんと説明したり、労働環境を整えなければ、帰属意識やモチベーションはすぐに低下してしまう。

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本郷:果ては裏切りを生むという教訓を間近で見ていたからこそ、徳川家康は世襲システムで安定政権を目指そうとする。

お家騒動が起きて徳川家が割れるのを防ぐため、3代家光を選ぶときからは、凡庸であってもとにかく長男を後継ぎにすることを徹底させようとする。実務は優秀な家臣団に任せればいい、という考え方でやっていく。

瀬戸:ただ人材抜擢や価値観の多様性を認める信長だからこそ時代を進歩させた面もあるわけでしょう?
 
例えば武士の戦い方は名乗りをあげてから、というようなルールを南蛮渡来の鉄砲を戦にもち込むことでぶっ壊した。これまで通り、保守的な「経営」をしていては進歩できないことを示したのも信長という人物なのかなという気がする。つまり、組織を進歩させたり、何事かを成し遂げるためにはやはり多様性を取り入れる発想が必要だということを見せた人物だったと。

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本郷:そう考えるとイノベーションを起こす条件にダイバーシティがあるんでしょうね。イノベーションというものはその技術なり、業界なり、分野というものが生き残るための術だと思っています。では生き残るための革新はどこから発生するのかといえば、まったく違った発想や異分野とのかけ合わせ。

瀬戸:その通りですね。万人受けを狙うより、マイノリティに受け入れられる製品開発を目指すほうがイノベーションを起こしやすいと思っています。

皮膚の摩擦に弱い人のために、スポンジで擦らなくても体を洗える「KINUAMI」という泡シャワーや、車いすの方にも対応した「ウエルライフ」というキッチンはリクシルで開発しましたが、シャワーならお子さんに、キッチンなら高齢者や、背が高くて座って調理したい人にも便利なんです。こうして、少数の声に耳を傾けた商品が、結果として裾野を広げるということはけっこうあるんです。

本郷:学問というものも決して万人受けを狙うものではないはず。地道に研究が重なっていくなかで、思いがけないかけ合わせが起こり、歴史学の復権と言えるような時代が来るといいのだけどね。

瀬戸:賢者が歴史から学ぼうとする限り、歴史学は死なないでしょう。そう信じたい。

本郷:革新的な事業も学問も「言語化できないところから」なのかな。

構成=谷村友也 写真=平岩 亨

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