当初はオペラを想定して企画
優秀な弁護士だが不遇を託っていたリタ・モラ・カストロ(ゾーイ・サルダナ)のもとに、メキシコで麻薬カルテルを牛耳るマニタス・デル・モンテ(カルラ・ソフィア・ガスコン)から驚くべき依頼が舞い込む。それは「女性として新たな人生を歩みたいので秘密裡にその用意をしてほしい」というものだった。
リタは冷酷で鳴らすマニタスに最初は恐怖を覚えるのだが、いまの仕事に見切りをつけるために、彼の要望に応えることにする。女性として生きることが昔からの夢だったというマニタスのために、世界を駆け巡り性別適合手術をする腕利きの医師を探し出す。
マニタスには妻のジェシー(セレーナ・ゴメス)と幼い2人の子どもがいたが、彼が女性としての人生を歩み始めるにあたり、敵対組織から彼女たちを守るため、リタは3人をスイスの新居に送り届ける。マニタスは麻薬カルテルの抗争によって殺されたことにして密かに手術を受け、新たにエミリア・ペレスとして生まれかわる。
4年後、リタもまたロンドンで仕事を得て新しい人生を送っていたが、ある夜、レストランで1人の女性から声をかけられる。それはエミリアとなっていたマニタスで、リタは口封じのためにやってきたのではないかと疑念を抱く。
しかし、エミリアは意外にもリタに「子どもたちが恋しいので、一緒に暮らしたい」という相談を持ちかける。リタはスイスから母子をメキシコの豪邸へと連れ戻し、エミリアはマニタスの従姉妹ということにして、奇妙な家族との同居が始まるのだった。
この後、物語はまたも意外な方向へと展開していくのだが、実はこの作品には、ところどころでミュージカルのようなシーンが挿入されている。主に登場人物たちの内面を映すような内容で、この音楽の絡むシーンが破天荒な物語をとても親しみやすいものにもしている。
特にリタ役のゾーイ・サルダナのパフォーマンスはとりわけ印象深いものとなっており、仮に随所に挟まれる歌のシーンがなかったならば、この「エミリア・ペレス」はもっとシリアスな物語として、まったく違ったものになっていたことは想像に難くない。
実は、この作品は当初オペラを想定して企画されたものだった。ミュージカル的演出が盛り込まれているのはそのためで、脚本も担当したジャック・オーディアール監督は、まず音楽を担当する人物を探し始めた。しかし原案となる小説(「Ecoute」ボリス・ラゾン著)の登場人物を変更するうちに、オペラから映画の脚本に変わったのだという。


