武田:サステナビリティに関して、ファッションや建築であれば、「購入しなければいい」「建てなければいい」という考えもありますが、食は「食べなければいい」と言われることはありません。そのため、「どのような食があるべきだろう」というアプローチができるという特徴がありましたね。
クマ:建築は「未来都市における循環のシンボル」というテーマでしたが、テーマ設定の背景には、短期間で建築の考えからアウトプットまでをまとめるのは難しいという現実がありました。
ただ、丸の内エリアが舞台になると、何か面白いことを起こせば、非常に注目される可能性はあります。そのため、オフィス街だと思われがちな丸の内において、循環の象徴となるモニュメントを表現できたら面白いのではないかと考え、テーマを設定しました。

武田:ファッションや食は作る過程を想像できる一方、建築は想像がつきませんから難易度が高かったように思います。とはいえ、どの授業も複数のアウトプットが生まれました。それぞれ実例をみてみましょうか。
野田:私たちは実際にいくつかの料理を作りましたが、なかでも『ホノオノニクパフェ』という料理は、参加者の思いが具現化されています。とにかく肉が好きで「お肉のパフェをやりたい」という生徒と、「とにかく燃やしたい」という生徒の明確な考えが合わさった一品です。
使用している肉は、害獣駆除などで廃棄されてしまうジビエ肉と、カシューナッツの殻などを飼料に島根で育てられ、CO2排出が60%ほど抑えられるというサステナブル和牛になります。
一方、「燃やしたい」という思いに関してですが、人間による消費が急増したのは、実は炎との出会いになります。炎によって今までは口にできなかったものが食料に変わり、それらを口にすることで一気に消費も増加しました。では、SDGsが叫ばれる現代において、燃やすとはどういうことなのか。考え直すきっかけになるような料理だと思います。

武田:なるほど。ファッションのアウトプットの一例は、実際に生徒に説明してもらいましょう。
生徒:今回は、私自身が自然や土、光を感じる行為が好きという気持ちから、人間の素の部分である裸足で大地に立つことで、体が大地に溶け出して大地から温度や空気が入ってくる感覚を作品として作りました。土や光を感じる行為と服を纏う行為に類似性があると思い、裸足で自然や土、光を感じることで大地に足が根付いている気分を表現しています。
クマ:建築の授業では、循環のモニュメントといっても、アクティビティも含むなど形に頼りすぎないように考えていきました。ただ、様々なアイデアが生まれたものの、どうしても“心の循環”などコンセプチュアルになりすぎてしまう面もあり、モノとコンセプトの両面をいかにしてアウトプットに落とし込めるかというところが最も苦労しました。


