━━なぜ20%超の金利のカネを借りるのか、日本人には違和感があるのですが、生きている条件が異なると、その行動の意味がよく理解できました。
例えば、銀行口座を維持するだけで1年で5000円以上の手数料を必要とする国があります。所得が低い人は銀行に口座すら持てないのです。銀行口座がないと、出稼ぎ労働者は家族に送金すらできない、あるいはできても手数料だけでも大きな額になります。そうなると、子どもが学校に行けないといった機会の平等とは逆の事態になります。機会の平等を拡大するには「金融包摂」が必要で、そのための民間版世界銀行であり、マイクロファイナンスを仕事にしています。
また、貯蓄など蓄えがそもそもない「その日暮らしに近い人々」にとって大事なのは、「今お金が必要」というスピード感です。生活の切迫感が異なること、さらに低所得層の人々は所得が低いという人もいますが、所得が安定していない。そういった生活条件の違いがあるため、利息に対する考えが異なります。実際に農村にご家庭で暮らしてみると、条件が違っても賢く生きるという点は同じだと思います。
低金利に慣れた日本人には20%という金利が高いと感じるでしょう。ただ、途上国の低所得層の人々が行う事業投資のリターンは平均して年率100%ということが多く、結果として預金金利は10%以上、借入金利は20%以上になることが少なくありません。私も最初はこの感覚が分からずに苦労したのですが、アジア途上国の金利については、日本の金利を5か6で割ると先進国の金利と比較可能になると思います。このあたりは拙著でも詳しく書いたので、気になる方はお読みいただければと思います。
先日、マイクロファイナンスに長年投資している欧州開発復興銀行の幹部たちが来日をして、こう聞かれました。
「あなたたちはマイクロファイナンスの後発組だけど、これまでの事業者と何が違うのか?」と。私は「各国で最大手を目指しています。これまでの人たちはそれを目指さなかったので失敗をしたと思っています」と答えました。すると、こう言われたのです。
「シンプルだけど、それが正解だと思う」
目が肥えた彼らのような人を納得させられるロジックが重要だと思っていたので嬉しかったですね。今のインパクトの流れを見ていても、日本は先進的な考え方をもっていて理解を広げているので、世界をリードできるポジションにあると思います。欧米で逆風のムードが出てきているなか、日本にその可能性を強く感じるのです。