カナダのマーク・カーニー首相は3月23日、当初は10月までに予定されていた総選挙を4月に前倒しして、有権者が自身と保守党のライバルのいずれかを選出すると発表した。同首相は、トランプ米大統領が課した関税によって、カナダが「重大な脅威」に直面していると述べている。
カーニー首相は23日の演説で、4月28日に解散総選挙を行うと発表し、「私たちは、トランプが仕掛けた不当な貿易戦争と、カナダを米国の『51番目の州』にしようとする動きに対抗する」と語った。
トランプ政権は、今月4日以降に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の適合品を除く、カナダからの輸入品に追加関税を課している。鉄鋼やアルミニウムにも25%の追加関税がかけられており、カナダは報復関税で対抗している。これによりカナダ国内では反発が広がっており、米国産の酒類を店頭から撤去する動きなどが起きている。
「カナダは今、トランプ大統領による不正な貿易措置と我々の主権への脅威によって、私たちの生涯でもっとも深刻な危機に直面している」とカーニー首相は23日の演説で語った。
同首相は、3月初めのトルドー前首相の辞任に伴う自由党の党首選で選出されたが、彼のリーダーシップは、国民全体を対象とした総選挙でまだ信任を得ていない
カーニー首相は、4月の総選挙で最大野党である保守党のピエール・ポワリエーブル党首と争うことになる。ポワリエーブル党首も、トランプ政権の関税やカナダを併合する動きに批判的だが、より保守的な立場を取っており、トランプや共和党に近い価値観を持っている。
自由党と保守党の支持率は拮抗
3月17〜20日に実施されたAbacusの世論調査によると、保守党の支持率は39%で、自由党の36%をわずかに上回っていた。ただし、トランプが大統領に就任して以来、自由党の支持率は急上昇しており、2024年末には、自由党が保守党に20ポイント以上差をつけられていたところから、ほぼ互角まで回復している。
カーニー首相は、トランプとその関税による経済的な不確実性にどう対処するかを問うことが今回の選挙の焦点になると語った。「トランプに対抗する最善の方法は、国内の力を結集することだ」と同首相は述べ、低所得層向けの減税措置も発表した。
3月16日に発表されたAbacusの調査によれば、カナダ人の50%がトランプとその政権を「直面する課題のトップ3」に挙げており、生活費の高騰(61%)に次ぐ主要な懸念としていた。トランプに対しては否定的な見方が支配的で、彼を好意的に見る有権者は13%にとどまっている。