昨年、ロシア軍は勝ちパターンを見つけた。空軍機は都市に加え、ウクライナ軍の前線の防御線も滑空爆弾で爆撃した。それによってぼろぼろになったウクライナ軍部隊を、続いて歩兵部隊が地上から攻撃し、圧倒した。
こうした「まず爆撃、次に突撃」戦術によって、ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の要塞都市アウジーウカを攻略し、同じ攻撃軸の40km西、次の要塞都市であるポクロウシクに向けて進軍してきた。
ロシア軍がポクロウシクに迫ってきたころ、何かが変わった。ロシア軍が同市郊外で行き詰まった2月、ロシア空軍に情報源をもつとされるテレグラムチャンネル、Fighterbomberは、エストニアのアナリストのWarTranslatedが翻訳・紹介している投稿のなかで「神のような滑空爆弾の時代は短命に終わった」と述べている。
メーカーによれば、Limaは特定の地域でロシア軍の滑空爆弾爆撃を減少させる要因のひとつになった。ポクロウシクを含む別の地域では、他社によって開発された別のジャマーの効果で滑空爆弾爆撃が抑えられた可能性もある。
電子戦による対抗
現在、ロシア軍の滑空爆弾はGLONASS(グロナス)との通信に手こずっている。GLONASSは、米国のGPS(全地球測位システム)よりは精度やカバレッジが劣るロシアの測位衛星システムだ。軌道修正のために安定した通信接続が確保できなければ、滑空爆弾は迷走し、平原などに落下して無害な爆発をする結果になることが多くなる。
ウクライナ側のジャミングにより、ロシア軍機が自国や自軍の支配地を爆撃してしまうこともある。「滑空爆弾がウクライナの領土まで届かず、ロシアの領土、あるいは一時的に占領されている(ウクライナ)領土に落下したケースもありました」(同メーカー)
Fighterbomberによれば、ウクライナ側の「高価値目標はすべて電子戦システムで必ずカバーされるようになっている」という。Fighterbomberは、1つの目標に命中させるには滑空爆弾が8〜16発必要になるかもしれないとも言及している。滑空爆弾自体は1発2万5000ドル(約370万円)程度で精密弾薬としては安価だが、滑空爆弾を一度に2発か4発投下するスホーイのジェット機はけっして安くない。
戦闘爆撃機や戦闘機を4機投入すれば目標に命中させられるかもしれないが、作戦機の配備数が1000機かそこらで、3年あまりの戦いで120機ほどを失っているロシア空軍にとって、そうした運用は危険であり、効率も悪い。


