フランス高等教育研究省は20日、米テキサス州ヒューストンで開かれた会議に出席する予定だったフランス人科学者が米国への入国を拒否され、強制送還されたと発表。この科学者がソーシャルメディア(SNS)上でトランプ政権の研究政策を批判したためと思われるとして、米政府を批判した。一方、米国土安全保障省はこれを否定し、同科学者が米国の研究所から「機密情報」を入手したことが理由だとしている。
米国土安全保障省のトリシア・マクローリン次官は、「トランプ政権は移民法を施行しているが、これは前政権ができなかったことだ。これらの法律に違反した者は、必要に応じて手続き、拘留、強制送還される」と説明した。米税関国境警備局のヒルトン・ベッカム広報担当副長官は「ビザは特典であって権利ではない」とくぎを刺した上で、「わが国の法律を尊重し、適切な手続きに従う者だけが歓迎される」と述べた。
各国で米国旅行へのボイコットを呼びかける声が高まる中、米旅行協会は19日、短文投稿サイトのX(旧ツイッター)に「米国は最高の行き先だ。米国旅行を奨励し、この国を特別なものにしている人々や行き先を紹介しよう」と投稿した。フォーブスは同協会と観光促進団体の「ブランドUSA」に取材を試みたが、いずれもコメントの要請には応じなかった。
NTTOによると、2024年に米国を訪れた外国人観光客が消費した金額は約2540億ドル(約38兆円)に上った。出入国に対する懸念や集団的ボイコットにより渡米を控える外国人旅行者が増えれば、米国の観光収入に深刻な打撃を与えるだろう。
トランプ大統領による関税や、カナダを米国の「51番目の州」にするという発言を巡り、カナダではすでに渡米を控える動きが広がっており、2月に陸路で米国に渡航したカナダ人の数は前年同月比で23%減少した。これだけの規模のボイコットが長期化すれば、米国は今年、最大で40億ドル(約6000億円)もの観光収入を失う可能性もある。