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欧州

2025.03.23 09:00

「ロシア打倒」に必要なペースで損失与えるウクライナ、だが自軍も激しく疲弊 消耗戦厳しく

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ウクライナにとって朗報もある。米情報機関の見積もりによれば、ウクライナ軍は2022年2月から2023年までにロシア軍人およそ31万5000人を死傷させた。年間では17万2000人ほどになる計算だ。

損失ペースは2024年に加速したとみられる。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは今月発表したレポートで、ロシア軍の「永久に失われた人員」(戦死者、重傷者、行方不明者、脱走者の合計)の累計数は46万〜56万人に達すると推定しており、米情報機関による2023年までの死傷者見積もりを踏まえれば、2024年だけで最大で20万人以上が永久に失われた可能性がある(編集注:なおフロンテリジェンス・インサイトはロシア軍の累計の戦死者を約21万人、重傷の戦傷者を約20万人と推計している。ロシア軍は年間13万〜14万人のペースで死者・重傷者を出している計算になる)。

ロシア軍は崩れつつあるのか

では、なぜロシア軍は崩壊していないのか? 答えは、まさにいま崩壊しつつあるから──ただし緩慢に、というものかもしれない。2月、ウクライナ東部での1年におよぶロシア軍の攻勢が行き詰まったことを考えてみよう。これは、ロシア軍が残存する最も優秀な部隊をロシア西部クルスク州に送り込んだためだったのかもしれない。そのクルスク州では、ロシア軍がウクライナ軍の侵攻部隊をほぼ排除することに成功した

東部攻勢の停滞はあるいは、ロシア軍が練度の高い部隊をついに使い果たし、その結果、有意義な攻勢行動を大規模に遂行する能力を失ったからかもしれない。まさにエストニア国防省が見込んでいたように。

だが、また別の結果も考えられる。そしてこれは、自由なウクライナの味方にとって憂慮すべきものだ。

フロンテリジェンス・インサイトの推定によれば、ウクライナ軍の永久に失われた人員も約30万人にのぼっている。こうした損失によってウクライナ軍の戦闘能力の低下が進んでいけば、戦場は一種の膠着状態に陥る可能性がある。疲弊した者同士が互いになんとかパンチを繰り出すものの、打撃力はだんだん弱くなり、どちらも決定的な一打を放てない──そんな状況だ。

こうした膠着は最終的にロシアに有利になるとフロンテリジェンス・インサイトは説明する。なぜならロシアの人口は1億4400万人と、ウクライナの人口3800万人の3倍以上あるからだ。

フロンテリジェンス・インサイトは「根本的な問題」としてこう警告する。「ウクライナのほうが動員基盤が小さく、動員キャンペーンも貧弱だ」

ウクライナは、ロシアがウクライナ軍を弱体化させるよりも早く、ロシア軍を弱体化させなくてはならない。現在のところ、損失比率はウクライナに有利だとはいえ、ロシアのほうがマンパワー(人的戦力)の余力が大きいことを考慮すれば、現状の比率ではとうてい十分でない。

損失比率を1対3に引き上げる必要

「ロシアは人口が(ウクライナよりも)少なくとも3倍多く、採用システムも優れている」とフロンテリジェンス・インサイトは指摘する。したがって「ウクライナにとって望ましい損失比率は、現在の見積もりに反映されている1:1.86(編集注:ウクライナ側の人的損失を30万人、ロシア側の人的損失を最大の56万人で計算)ではなく、少なくとも1:3であるはずだ」

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翻訳・編集=江戸伸禎

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